すまいのスタディ

2023.06.16

「譲渡」と「贈与」?わかりにくい不動産用語の基礎知識

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令和6年4月1日から「相続登記」が義務化されます。まずは、相続の開始から3年以内に相続登記をしなければ、罰則として10万円以下の過料が課される可能性があると覚えておきましょう。

このような法律の制定・改正が行われると、その内容が自分の生活にどのように関係するのかわかりにくいことがありますね。特に、不動産の売買や相続などは日常的なことではないため、それらに関わる用語は理解しにくく戸惑うことがあります。

例えば、「相続登記」と「所有権移転登記」の違いとは?不動産の「譲渡」と「贈与」の違いとは?この記事では、不動産の所有に関わる用語についてわかりやすく解説します。

意味合いは似ているけど何が違うの?

不動産用語は専門性が高く、普段の会話に出てくることのない言葉や言い回しが多く使われます。文字面は似ているけれども、その用語が示す意味や権利、行うことに大きな違いがあることも。覚えておきたい用語をまとめてみました。

■「所有権移転」と「所有権移転登記」

「所有権」とは「物権」のことで、民法上も認められる一定の"物"に対する直接的な"権"利を指しています。「所有権」を持つことで、不動産を自由に使用し、収益のための利用や処分もできるようになります。

「所有権移転」とは、"物権変動"つまり、誰の所有物かが変わることを示します。
では、移転の時期とはいつなのか?民法176条で『物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。』と定められ、当事者間で「売ります」「買います」といった意思表示が行われた時点で「所有権移転」が成立します。

不動産売買の契約締結時は、売主に対し買主が手付金を支払い、残代金は後日となるのが一般的です。この時点で、民法上は買主が残代金未払いでも「所有権」を持ったことになります。売主としては甚だ不安になる契約です。しかし、多くの場合は約定事項を定めて残代金支払い時を「所有権移転」時期と決めることでリスクを回避しています。

「所有権移転登記」とは、公に誰の所有物であるかを周知することです。
民法177条では『登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。』とあります。
不動産登記制度で法務局に管理される登記を行うことで、自らが所有者であることを主張できるのです。
たとえば、親との間で「息子である自分に不動産を譲る」と贈与の意思表示があっても、親族などに「私が譲られることになっている」と言われたら...。登記が完了していなければ所有権があると主張できないということが起こり得ます。

■「所有権移転登記」と「相続登記」

所有権の移転は「登記」することが重要だとわかりました。大切な財産である不動産が自身の所有物であることを明らかにしてくれる「所有権移転登記」は、不動産を売買した、贈与された、相続をしたときに行います。

「相続登記」とは、「所有権移転登記」の分類のひとつで、不動産の相続・贈与の際に行う登記を指しています。「相続登記」の義務化には、所有者がわからないことで復旧・復興事業や取引を進められない、空き家の老朽化で倒壊などの危険があっても対応できないといった"所有者不明土地問題"が背景にあります。

速やかな不動産の相続のためにも「所有権移転登記(相続登記)」は重要です。
たとえば、遺産分割協議で単独で相続が決定した不動産があったとします。相続後に登記をしていないと、他の相続人は法定相続分の「所有権移転登記」が可能になってしまいます。本来の所有者が知らぬ間に、他の相続人によって法定相続分の不動産登記が行われたことで、不動産の一部が売却されたり、担保物件になっていたというトラブルも起きているのです。

「相続」「贈与」そして、「譲渡」

では、不動産の所有者が変わるとき使われる3つの用語、「相続」「贈与」「譲渡」にはどのような違いがあるのでしょうか。以下のように分けられます。

◎相続:所有者の死後に、無償で財産(不動産)の権利を引き継ぐこと
◎贈与:所有者の生前に、無償で財産(不動産)の権利を譲り渡すこと
◎譲渡:有償(売却・交換などの対価)で、財産(不動産)の権利を譲り渡すこと

「譲渡」は、権利を"譲"り"渡"すという意味では、対価の有無を問いません。相続・贈与も譲渡と考えがちですが不動産用語では、売却や相当の対価での交換を意味するので「譲渡=有償」となります。
親子や親族間での「譲渡」もあり得ます。その際は、「贈与」ではなく、一般の売買と同様に有償である事実を証明する売買契約書の締結、銀行口座の授受履歴などが求められます。

また、「相続」には、「相続分譲渡」という遺産相続権を失する権利があります。これは、自身の法定相続分を共同相続人や第三者に譲り渡すことです。譲渡の条件は、有償・無償のどちらでもよく、遺産分割前に行うことで相続トラブルから逃れることができます。
「相続放棄」と混同しがちですが、負債がある場合、「相続放棄」ははじめから相続人ではなくなり負債の相続はなく、「相続分譲渡」では、負債の支払い義務が残ることに注意が必要です。

以下の不動産売買や相続に関連する記事もぜひご覧ください。
▶不動産売買の基本の流れ:家を売るとき、買うとき。知っておきたい買い替えの手順
▶不動産贈与に関する情報:生前贈与と住まい。相続を前に親子で話し合っておきたいこと

まとめ

不動産に関する用語は、言葉の意味合いだけを鵜にすると想像と違うことも。正しく理解できていないと手続きが煩雑になったり、権利を行使できなくなることもあるとお分かりいただけるのではないでしょうか。

「所有権移転登記」で納める登録免許税をみても、「相続」と「贈与」では5倍の開きがあり、「相続」「贈与」と「譲渡」では元となる不動産の価額の基準も異なります。
◎相続:不動産の価額×0.4%
◎贈与:不動産の価額×2%
◎譲渡:不動産の価額×2%

▶不動産の価額:土地の価格はどう決まる?4つの価格の違いをわかりやすく解説!

不動産の用語を知るだけでは、「登記の手続きがわからない」「どれが有効な相続対策なのか」と迷われる方も多いでしょう。さまざまな手続きを効率よく進めるためには専門家に依頼をすることもひとつの方法です。
不動産に関してお困りごとがあれば、ぜひ一度『阪急阪神不動産』に相談してみませんか?

※2023年6月16日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。