不動産を売却しても、売却代金の全額に税金がかかるわけではありません。所得税や住民税等が課されるのは、原則として売却代金から取得費や譲渡費用等を差し引き、利益(譲渡所得)が残る場合です。
ただし、建物の取得費は減価償却費相当額を差し引いて計算します。そのため、購入価格を下回る金額で売却しても、税務上は利益が出る場合があります。一方、マイホームの売却では、最高3,000万円の特別控除によって利益(譲渡所得)が3,000万円出ても税額がゼロになるケースもあります。
本記事では、不動産売却でかかる税金の種類、譲渡所得の計算方法、控除・特例、確定申告の期限・必要書類を解説します。売却価格6,000万円のシミュレーションも紹介するため、税引後の手取り額を考える際にお役立てください。
※本記事は2026年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。税額や特例の適用可否は個々の状況によって異なるため、税務署または税理士に必ずご確認ください。
不動産売却の税金はいくらかかるのか

不動産を売却したときの税額は、売却価格ではなく譲渡所得の有無や所有期間によって変わります。まずは、税金がかかる仕組みと税額の目安を確認しましょう。
本章では、以下の内容を解説します。
- 利益が出なければ譲渡所得税は発生しない
- 3,000万円特別控除で税額がゼロになる場合がある
- 売却価格6,000万円の税額シミュレーション
利益が出なければ譲渡所得税は発生しない
不動産の売却で譲渡所得が出なければ、譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税は発生しません。本記事では、これらをまとめて便宜上「譲渡所得税」と表記します。
譲渡所得は、次の式で計算します。
- 譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
- 課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除額
売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた金額が0円以下であれば、譲渡所得税は課されません。利益が出ても、特別控除後の課税譲渡所得が0円になれば、譲渡所得税は0円です。
ただし、紙の不動産売買契約書を作成する場合の印紙税や、抵当権抹消登記を行う場合の登録免許税は、利益の有無にかかわらず発生します。
3,000万円特別控除で税額がゼロになる場合がある
マイホームを売却した場合は、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。
例えば、取得費と譲渡費用を差し引いた後の譲渡所得が2,000万円であれば、特例の適用によって課税譲渡所得は0円になります。所有期間の長短は、同特例の適用要件ではありません。
特例を適用して税額が0円になる場合も、確定申告が必要です。申告をしなければ特例は適用されないため、売主は、売却した年の翌年に確定申告を行ってください。
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
売却価格6,000万円の税額シミュレーション
次の条件で、3,000万円特別控除を適用する場合と、控除を利用せず長期・短期の各税率を適用する場合を比べます。
- 対象不動産:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例の要件を全て満たすマイホーム
- 譲渡価額:6,000万円
- 減価償却後の取得費:3,600万円
- 譲渡費用:200万円
- 譲渡所得:6,000万円-(3,600万円+200万円)=2,200万円
| ケース | 課税譲渡所得 | 計算 | 税額 |
| 3,000万円特別控除を適用 | 0円 | 2,200万円-3,000万円 | 0円 |
| 長期譲渡所得 | 2,200万円 | 2,200万円×20.315% | 446万9,300円 |
| 短期譲渡所得 | 2,200万円 | 2,200万円×39.63% | 871万8,600円 |
※上記は条件を単純化した試算による概算を記載しています。税金の計算は個々の状況により異なり、法改正によって変更される場合があります。詳細は税務署または税理士に必ずご確認ください。
同じ売却価格でも、特例の適用可否や所有期間によって税額は大きく異なります。住宅ローンの残高は譲渡所得の計算では差し引けないため、手元に残る現金と税務上の利益は分けて考えてください。
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個人がマイホームを売却する場合にかかる税金

個人がマイホームを売却する場合にかかる税金は、印紙税・登録免許税・譲渡所得税の3種類です。発生する条件と支払時期は、税金ごとに異なります。
| 税金 | 発生する主な条件 | 税額の決まり方 | 主な支払時期 |
| 印紙税 | 紙の不動産売買契約書を作成した場合 | 契約書の記載金額 | 売買契約の締結時 |
| 登録免許税 | 抵当権抹消登記等を行う場合 | 原則として不動産1個につき1,000円。ただし、20個以上の不動産について同一の申請書で抹消登記を行う場合は2万円 | 登記申請時 |
| 譲渡所得税 | 課税譲渡所得が生じた場合 | 課税譲渡所得×所有期間に応じた税率 | 所得税・復興特別所得税:売却した年の翌年の確定申告期限まで/住民税:売却した年の翌年度 |
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書等の課税文書を作成した場合に課される税金です。紙の契約書に、契約金額に応じた収入印紙を貼り付け、消印をして納めます。
2027年3月31日までに作成される一定の不動産売買契約書には、軽減措置が適用されます。主な契約金額帯の税額は以下のとおりです。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
| 500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
電子契約では紙の課税文書を作成しないため、印紙税が発生せず、費用を節約できます。ただし、不動産会社が電子契約に対応していても、売主・買主双方の合意が必要です。売主が電子契約を行おうとする際は、売買契約の締結前に、不動産会社の対応状況を確認し、買主と電子契約の利用について合意してください。
参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
参考:国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」
登録免許税
売却する不動産に住宅ローンの抵当権が設定されている場合は、原則としてローンを完済し、抵当権抹消登記を行います。抵当権抹消にともなう登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。ただし、20個以上の不動産について同一の申請書で抹消登記を行う場合は2万円です。
土地1筆と建物1棟であれば、税額は合計2,000円です。敷地が複数の筆に分かれている場合は、その筆数も含めて計算します。司法書士へ手続きを依頼する場合の司法書士への報酬は、登録免許税とは別の費用です。
住所や氏名が登記記録と異なる場合は、抵当権抹消登記や所有権移転登記を行う前提として、住所・氏名の変更登記が必要です。売主は、売買契約を締結する前に、登記事項証明書の住所・氏名と現在の住所・氏名を照合し、必要な手続きを司法書士へ確認しておいてください。
参考:法務局「不動産登記の申請書様式について」
参考:法務局「抵当権の登記を抹消する場合の申請書の様式・記載例」
譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税)
土地や建物の譲渡所得は、給与所得や事業所得とは分けて税額を計算する申告分離課税の対象です。課税譲渡所得がプラスになった場合は、所有期間に応じた税率をかけます。
所得税と復興特別所得税は、原則として売却した年の翌年の確定申告期限までに確定申告を行い、国(税務署)に納付します。住民税は、確定申告の内容をもとに市区町村から請求されます。売却した年の翌年度に納めてください。
マンションを売却する際の税金については、以下の記事を参考にしてください。 |
譲渡所得と税額を計算する5つの手順

譲渡所得税は、譲渡価額、取得費、譲渡費用、特別控除、税率の順に整理すると計算しやすくなります。各項目の意味と、見落としやすい費用を確認しましょう。
本章では、以下の内容を解説します。
- 譲渡価額を確認する
- 取得費を計算する
- 譲渡費用を集計する
- 適用できる特別控除を差し引く
- 所有期間に応じた税率をかける
①譲渡価額を確認する
譲渡価額は、買主から受け取る売却代金が中心です。固定資産税・都市計画税の清算金を買主から受け取った場合は、税務上、譲渡価額に含めて計算します。
住宅ローン残高は、譲渡価額から差し引けません。売却代金の多くをローン返済に充てる場合でも、譲渡所得がプラスであれば課税されます。
②取得費を計算する
取得費とは、不動産の購入や建築にかかった費用です。主に以下の金額が該当します。
- 土地・建物の購入代金や建築代金
- 購入時の仲介手数料
- 購入契約書の印紙税
- 登録免許税や不動産取得税(業務の用に供される資産に係るものを除く)
- 土地の造成費や測量費
- 資産価値を高める改良費や設備費
土地は減価償却を行いません。一方、自宅等の非業務用建物は、原則として次の式で減価償却費相当額を求め、建物の購入代金から差し引きます。
減価償却費相当額=建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数
償却率は建物の構造によって異なります。経過年数は、6か月以上の端数を1年とし、6か月未満を切り捨てます。減価償却費相当額は、建物の取得価額の95%が上限です。
参考:国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」
取得費が分からない場合は、譲渡価額の5%を概算取得費として計算できます。ただし、実際の取得費より低くなり、譲渡所得が大きくなる場合があります。まずは購入時の売買契約書、工事請負契約書、購入代金の振込履歴が分かる通帳、住宅ローンの金銭消費貸借契約書等を探してください。
参考:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
③譲渡費用を集計する
譲渡費用とは、不動産を売るために直接かかった費用です。維持や管理のための支出は、原則として含まれません。
| 譲渡費用に含まれる主な支出 | 原則として含まれない主な支出 |
| 売却時の仲介手数料 | 固定資産税・都市計画税 |
| 売買契約書の印紙税 | 住宅ローンの返済額 |
| 売却に必要となる土地面積を確定させるための測量費 | 引っ越し費用 |
| 土地を売るための建物解体費 | 建物の通常の修繕費・維持管理費 |
| 貸家を売るため賃借人に支払った立退料 | 抵当権抹消登記の司法書士報酬 |
※司法書士報酬には、各種登記手続きの費用等が含まれます。
リフォーム費用は、工事内容と目的によって扱いが異なります。資産価値を高める改良費として取得費に含むことができる場合はありますが、売却前に行った工事がすべて譲渡費用として扱われるわけではありません。
参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
不動産を売却する際の仲介手数料が気になる方は、以下の記事も参考にしてください。 |
④適用できる特別控除を差し引く
譲渡所得から、3,000万円特別控除等の適用額を差し引き、課税譲渡所得を求めます。特別控除額が譲渡所得を上回る場合、課税譲渡所得は0円です。
特例ごとに、対象となる不動産、売却期限、買主との関係、併用できない適用要件が定められています。所有する不動産について解体、賃貸、親族間売買等を始める前に、必ず国税庁の各ページで要件を確認してください。
個別の適用可否は、税務署または税理士に必ずご確認ください。
⑤所有期間に応じた税率をかける
2026年中(2026年12月31日まで)に売却する場合の税率は以下のとおりです。所有期間は、売却した年の1月1日時点で判定します。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計税率 |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
2026年中の売却では、2020年12月31日以前に取得した土地・建物が長期譲渡所得、2021年1月1日以後に取得したものが短期譲渡所得になります。実際の保有期間が5年を超えていても、売却年の1月1日時点では5年以下となる点に注意が必要です。
相続や贈与で取得した不動産は、原則として被相続人や贈与者の取得時期を引き継ぎます。相続日や贈与日から所有期間を数えるわけではありません。
なお、2027年1月1日以後に生ずる所得には、防衛特別所得税が加わり、復興特別所得税の税率も変更されます。2027年以後に売却する場合は、国税庁の最新資料で税目と計算方法をご確認ください。
参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」
マイホーム売却で使える控除・特例

マイホームの売却で適用要件を満たしていれば、利益が出た場合の控除・軽減税率・課税の繰延べと、損失が出た場合の特例があります。
本章では、以下の内容を解説します。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
- マイホームの譲渡損失に関する2つの特例
- 売却の特例と新居の住宅ローン控除は併用できません
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
自分が住んでいる家屋とその敷地を売却した場合は、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。以前住んでいた家屋でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば、対象になる可能性があります。
売却先が配偶者、直系血族、生計を一にする親族等である場合は適用できません。家屋を取り壊して敷地を売る場合は、取壊しから1年以内に売買契約を締結することや、契約日まで貸駐車場等に使用しないこと等の適用要件があります。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
売却した年の1月1日時点で、売却した家屋とその敷地の所有期間がともに10年を超えるマイホームは、一定の要件を満たすと軽減税率を適用できます。3,000万円特別控除との併用が可能です。
| 3,000万円特別控除後の課税長期譲渡所得 | 合計税率 |
| 6,000万円以下の部分 | 14.21% |
| 6,000万円を超える部分 | 20.315% |
例えば、3,000万円特別控除後の課税長期譲渡所得が2,000万円であれば、税額は284万2,000円です。課税長期譲渡所得が7,000万円の場合は、6,000万円以下の部分と6,000万円を超える1,000万円の部分に分け、それぞれの税率で計算します。6,000万円×14.21%=852万6,000円、1,000万円×20.315%=203万1,500円となり、税額は合計1,055万7,500円です。
参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
居住期間が10年以上で、売却した年の1月1日時点において売却した家屋とその敷地の所有期間がともに10年を超える等の要件を満たしてマイホームを買い換えた場合は、譲渡益への課税を将来へ繰り延べられることがあります。
2026年度税制改正により、適用期限は2027年12月31日まで延長されました。また、2026年1月1日以後の譲渡に係る買換資産が建築後使用されたことのない家屋で、2028年1月1日以後に居住する場合または居住する見込みである場合は、一定の災害危険区域等内に建築された家屋が原則として対象外となります。
この制度は非課税ではありません。買い換えた住宅を将来売却するときに、繰り延べた譲渡益を含めて計算します。3,000万円特別控除や軽減税率の特例とは併用できません。
マイホームの譲渡損失に関する2つの特例
土地・建物の譲渡損失は、原則として給与所得等と相殺できません。ただし、一定のマイホームで損失が出た場合は、次の特例を利用できる場合があります。
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
その年に控除しきれない損失は、一定の要件を満たすと翌年以後3年間繰り越せます。2026年度税制改正により、両制度の適用期限は2027年12月31日まで延長されました。
なお、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」では、2026年1月1日以後の譲渡に係る買換資産が建築後使用されたことのない家屋で、2028年1月1日以後に居住する場合または居住する見込みである場合、一定の災害危険区域等内に建築された家屋は原則として買換資産の対象外となります。
参考:国税庁「個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度 税制改正のあらまし」
売却の特例と新居の住宅ローン控除は併用できません
マイホームである旧居の売却で3,000万円特別控除や軽減税率等を適用すると、新居へ入居した年、その前年・前々年は住宅ローン控除を利用できません。また、新居へ入居した年の翌年から3年目までに旧居へこれらの特例を適用した場合も、住宅ローン控除を利用できません。
売却益が少ない場合は、3,000万円特別控除による減税額より、住宅ローン控除を利用した場合の控除総額の方が大きくなることもあります。売主は、売買契約と新居への入居の前に、旧居の売却予定日、新居への入居予定日、住宅ローンの借入予定額、見込み所得税額等を整理し、どの制度を利用するかを税務署または税理士に必ずご確認ください。
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相続した不動産・低未利用土地等の売却で使える特例

相続した空き家や低未利用土地等には、マイホームとは別の特例があります。
本章では、以下の内容を解説します。
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
相続または遺贈によって取得した一定の家屋や敷地を2027年12月31日までに売却すると、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる場合があります。対象財産を取得した相続人が3人以上の場合の控除額は、1人あたり最高2,000万円です。
同特例を利用するには、複数の要件を全て満たす必要があります。主な要件は以下のとおりです。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続開始直前に、原則として被相続人以外に居住者がいなかったこと
- 相続開始から売却まで事業、賃貸、居住に使用していないこと
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること。1億円以下かどうかは、相続の時から、特例の対象となる家屋または敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、本人や他の相続人が分割して売却した対象部分の売却代金も合算して判定する
- 譲渡時に一定の耐震基準を満たしているか、譲渡前に家屋の全部を取り壊し、取壊し等の時から譲渡の時まで敷地を建物または構築物の敷地の用に供していないこと。2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡では、譲渡日の属する年の翌年2月15日までに一定の耐震基準を満たすか、家屋の全部を取り壊した場合も対象になり得る
被相続人が相続開始直前まで要介護認定又は要支援認定を受けて老人ホーム等に入所していた場合も、一定の要件を満たせば対象になることがあります。市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」等が必要です。
参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続税を課税された方が、相続または遺贈によって取得した不動産を一定期間内に売却した場合は、相続税額のうち所定の金額を取得費に加算できます。
売却期限は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。不動産を売却する相続人は、相続開始日と相続税の申告期限を基に期限を算定し、売買契約の締結前に税務署または税理士へ確認してください。
被相続人の居住用財産に関する3,000万円特別控除とは併用できません。両方の要件を満たす場合、相続人は、それぞれを適用した場合の税額を試算し、利用する特例を税務署または税理士へ必ずご確認ください。
参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除
都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を売却した場合は、長期譲渡所得から最高100万円を控除できることがあります。2026年度税制改正により、適用期限は2028年(令和10年)12月31日まで延長されました。
譲渡価額の上限は原則500万円です。ただし、市街化区域、区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域のうち用途地域が定められている区域、または所有者不明土地対策計画を作成した市町村の一定の区域では800万円以下となります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えること、売却後にそのまま放置せず利用されること、市区町村が交付する「低未利用土地等確認書」を取得すること等を含む複数の要件を全て満たす必要があります。
※低未利用土地とは、居住用や事業用等に利用されていない土地、または周辺の土地と比べて利用の程度が著しく低い土地を指します。
参考:国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」
参考:国税庁「個人の方が株式等や土地・建物等を譲渡した場合の令和8年度 税制改正のあらまし」
共有名義・賃貸物件・事業用不動産を売却する場合

共有名義、賃貸物件、事業用不動産では、一般的なマイホームと違い、計算方法や特例、消費税の扱いが異なります。
本章では、以下の内容を解説します。
- 共有名義は共有者ごとに計算・申告する
- 賃貸物件は減価償却後の取得費を用いる
- 事業用建物の売却では消費税等も確認する
共有名義は共有者ごとに計算・申告する
共有不動産を売却した場合は、共有持分(不動産全体に対する所有権の割合)に応じて譲渡価額、取得費、譲渡費用を配分し、共有者ごとに譲渡所得を計算します。
共有のマイホームでは、要件を全て満たす各共有者が最高3,000万円の特別控除を受けられます。ただし、家屋を所有せず敷地だけを共有している方は対象になりません。
参考:国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」
賃貸物件は減価償却後の取得費を用いる
賃貸アパートや投資用マンションの建物部分は、売却時、建物を取得してから売却するまでの毎年の減価償却費の合計額を建物の取得価額から差し引いて取得費を計算します。減価償却費を必要経費に算入していない年がある場合も、その年の減価償却費を合計額に含めます。
純粋な賃貸物件には、居住用財産の3,000万円特別控除を適用できません。以前住んでいた家屋を賃貸した後に売る場合は、旧居としての売却期限等を満たせば対象になることがあります。
事業用建物の売却では消費税等も確認する
課税事業者が店舗や事務所等の事業用建物を売却した場合は、建物部分が消費税等の課税対象になることがあります。土地の譲渡は消費税等の非課税取引です。
個人が生活用として所有するマイホームの建物を売る場合は、通常、消費税の課税対象になりません。
店舗併用住宅の売主は、居住用部分と事業用部分の区分や消費税の課税関係を、売買契約の締結前に税務署または税理士へ必ずご確認ください。
不動産売却後に確定申告が必要なケース・期限・必要書類

課税譲渡所得が生じた場合や、申告を要件とする特例を利用する場合は、確定申告が必要です。会社員も、不動産の譲渡所得は勤務先の年末調整では処理されません。
本章では、以下の内容を解説します。
- 課税譲渡所得が生じた場合は確定申告する
- 確定申告は売却した年の翌年に行う
- 確定申告で準備する主な書類
- 所得税等と住民税の納付時期は異なる
課税譲渡所得が生じた場合は確定申告する
課税譲渡所得が生じた場合は、売却した年の翌年に確定申告を行います。3,000万円特別控除や譲渡損失の特例を利用する場合は、適用後の税額が0円でも申告が必要です。
特例を利用せず、譲渡所得がマイナスになった場合は、通常、不動産売却についての申告は不要です。ただし、同じ年に別の土地・建物の譲渡益がある場合や、譲渡損失の特例を利用する場合は扱いが異なります。
確定申告は売却した年の翌年に行う
確定申告の期間は、原則として売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。期限日が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、翌平日が期限となります。
譲渡日は原則として買主へ引き渡した日ですが、契約の効力が発生した日を譲渡日として申告できる場合もあります。契約と引き渡しが年をまたぐ場合、売主は、売買契約書と引渡日が分かる書類を用意し、どの年分として申告するかを税務署または税理士へ確認してください。
確定申告で準備する主な書類
必要書類は、利用する特例によって異なります。共通資料を集めたうえで、特例ごとの確認書や証明書を追加しましょう。
| 書類 | 確認できる内容 |
| 売却時の売買契約書 | 譲渡価額、契約日、物件情報 |
| 購入時の売買契約書・工事請負契約書 | 取得費、取得日 |
| 仲介手数料・印紙税・測量費等の領収書 | 譲渡費用 |
| 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 | 譲渡所得の計算明細 |
| 登記事項証明書、または「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」等 | 所有者、取得日、物件情報 |
| 前住所記載のある住民票、または戸籍の附票等 | 住民票と売却物件の住所が異なる場合の居住実績 |
| 譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書(売買契約日の前日のもの) | 特定のマイホームの譲渡損失特例を利用する場合 |
| 買換資産に係る住宅借入金等の残高証明書 | マイホームを買い換えた場合の譲渡損失特例を利用する場合 |
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 相続空き家の特例を利用する場合 |
参考:国税庁「A4-1 申告手続き(譲渡所得関係 申告書添付書類)」
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、案内に沿って申告書を作成できます。オンラインで提出する場合は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用します。
不動産売却の流れや必要書類、費用が気になる方は、以下の記事も参考にしてください。 |
所得税等と住民税の納付時期は異なる
所得税と復興特別所得税は、原則として確定申告期限までに納付します。住民税は、確定申告の内容をもとに市区町村が計算し、売却した年の翌年度に納付します。
売却代金を住宅ローンの返済や新居の購入へ全額充てると、後から納税資金が不足する可能性があります。概算税額が分かった時点で、納税予定額を別に確保しておきましょう。
不動産売却の税金を売却前に確認するポイント

契約後に選べる対処方法は限られます。購入時の売買契約書や工事請負契約書等、所有期間、特例の要件、納税資金を売却前に確認し、税引後の手取り額を比べましょう。
本章では、以下の内容を解説します。
- 購入時の契約書や領収書を探す
- 所有期間の境目を確認する
- 解体・賃貸・親族間売買の前に特例の要件を確認する
- 査定額を基に税金・諸費用を見込み、手取り額を試算する
購入時の契約書や領収書を探す
取得費を証明できない場合に譲渡価額の5%を概算取得費として使うと、譲渡所得が大きくなる場合があります。
購入時の売買契約書が見つからなくても、購入代金の振込履歴が分かる通帳、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、工事請負契約書等が残っていないか確認してください。
所有期間の境目を確認する
短期譲渡所得と長期譲渡所得では、合計税率に19.315ポイントの差があります。
長期譲渡所得へ切り替わる時期が近い売主は、売却予定時期ごとの税額を試算し、価格変動に加えて、固定資産税等や管理費等の保有コストも含めて比較してください。
解体・賃貸・親族間売買の前に特例の要件を確認する
マイホームや相続空き家の特例には、取壊しの時期、売却までの利用方法、買主との関係等の要件があります。
先に駐車場として貸したり、親族へ売却したりすると、特例を利用できなくなる場合があります。
査定額を基に税金・諸費用を見込み、手取り額を試算する
査定額は、インターネット等の通常の営業活動を行い、概ね3か月程度で売れると見込まれる価格の目安であり、成約価格と一致するとは限りません。
売主は、査定額を成約価格とした場合の手取り額を試算する際、借入先の金融機関で確認した最新の住宅ローン残高、仲介手数料、登記費用、譲渡所得税等を差し引き、引き渡し時と翌年以後の支出を時系列で整理します。
住宅ローン残高は、繰上返済や変動金利の適用金利変更により返済予定表の記載額と異なる場合があるため、借入先の金融機関で最新額を確認してください。
不動産売却を進めるなら『阪急阪神の仲介』へ

不動産を売却する際は、査定価格だけでなく、売却に必要な諸費用や手続きも確認しておく必要があります。『阪急阪神の仲介』では、現地調査や役所調査を基に査定価格を算出し、売却に必要な諸手続きや諸経費についても説明しています。
- 売却可能価格を無料で査定
- 希望や物件の状況に応じた売却戦略を提案
- ホームページや不動産ポータルサイト等を活用
- 一般仲介のほか、条件に応じて買取保証や直接買取にも対応
- 建物・設備検査保証や仮測量等のサポートを用意
『阪急阪神の仲介』の担当者から、査定、販売活動、契約条件の調整まで支援を受けられるため、売却価格や諸費用を踏まえた計画を立てやすくなります。不動産売却を検討している方は、『阪急阪神の仲介』へご相談ください。
不動産売却の税金に関するよくある質問

不動産売却の税金について、購入時の売買契約書がない場合の取得費の確認方法と、税金の相談先をまとめました。
本章では、以下の内容を解説します。
- 購入時の売買契約書がない場合、取得費はどのように確認しますか?
- 税金は不動産会社と税理士のどちらに相談すればよいですか?
購入時の売買契約書がない場合、取得費はどのように確認しますか?
取得費を証明できない場合は、譲渡価額の5%を概算取得費として計算することがあり、税負担が増える可能性があります。
購入代金の振込履歴が分かる通帳、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、登記事項証明書、工事請負契約書等を確認してください。どの資料で取得費を証明できるかは、税務署または税理士へ必ずご確認ください。
税金は不動産会社と税理士のどちらに相談すればよいですか?
売却価格、売却方法、諸費用、スケジュールは不動産会社へ相談できます。個別の税額計算、特例の適用判定、税務書類の作成や申告代理は、税理士へご相談ください。
不動産会社の査定額と売却諸費用の見込みを用意したうえで税理士へ相談すると、税引後の手取り額を具体的に確認しやすくなります。
まとめ
不動産売却で譲渡所得税がかかるかどうかは、売却価格ではなく譲渡所得によって決まります。譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引き、利用できる特別控除を適用した後、所有期間に応じた税率で計算してください。
購入時の売買契約書や工事請負契約書等がない場合や、建物の減価償却が必要な場合は、想定より譲渡所得が大きくなることがあります。マイホーム、相続空き家、低未利用土地等には個別の特例があるため、売主は、売買契約を結ぶ前に、国税庁の公式ページで適用要件と併用関係を確認してください。
個別の適用可否は、税務署または税理士へ必ずご確認ください。








