不動産はひとりの人が所有権を持つ単独名義が一般的。でも、共働き世帯や親との同居世帯などの場合、ふたり以上で所有権を持つ共有名義にすることもあります。
ふたりで共に働き、住宅ローンを一緒に支払っていく、まさに夫婦共有の財産と考えますよね。
不動産を共有名義にする場合には、将来を考えた上で、メリット・デメリットを理解して判断することも大切です。
まずは、共有名義を選ぶ上で知っておきたい基本のお話から整理してみましょう。
夫婦で共有名義の不動産を
共有名義とは、不動産を取得する際、共同で資金を出し合い、出資金額の割合に応じて所有持分を登記することです。例えば、5000万円のマンションを夫婦で2500万円ずつ出資するとして、それぞれの頭金とペアローンを利用して購入したならば、所有持分の比率は"2分の1"ずつの登記になります。
この場合、押さえておきたいメリット・デメリットは、以下のとおりです。
住宅ローンが組みやすく、控除もそれぞれに適用
金融機関では、収入・資産を基準に住宅ローンの借り入れ審査が行われます。夫婦でペアローンを利用した共有名義にすれば、ふたり分の収入・資産の合算で審査されるため、購入予算が広がり、住まいの選択肢も増えるといえるでしょう。
さらに、住宅ローン控除制度はそれぞれに適用を受けられます。年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税や住民税から最大13年間それぞれ減税されると、単独名義よりも控除額が多くなることも考えられ、節税効果が期待できます。
ただし、不動産購入や住宅ローンの契約時の事務手数料や登記手数料といった諸費用が名義人の数だけ発生します。このため、諸費用は高くなりやすい点がデメリットといえます。
共有か、単独か。名義人を決める際は、贈与税に注意!
共有名義で不動産を登記する場合、誰がいくら出資したかに応じて持分を決めないと、贈与税の対象になる可能性があることに注意しなくてはなりません。
例えば、先ほどの5000万円のマンション。夫婦で同額の2500万円ずつ負担する場合でも、夫婦どちらかの単独名義にすると、夫から妻へ、あるいは妻から夫へ2500万円分の贈与があったとみなされます。
夫あるいは妻の両親から頭金を出資してもらうケースでは、出資した両親の子を名義人にするべきで、夫の出資金のみで購入する単独名義の不動産を、妻との共有名義で登記すると、夫から妻への贈与とみなされるのです。
家族間であっても資金の出所をあいまいにしてはいけないということですね。
親子で共有名義にするときは?
親子で購入する場合も、共同で資金を出し合うことで、購入予算が広がり、住まいの選択肢が増えることは同じです。夫婦同様のペアローンのほか、親子リレー形式で返済するリレーローンなどを選ぶこともできます。では、親子で共有名義にした場合、どんなことがポイントになるでしょうか。
相続を考えた持分比率で共有名義に!
注意しておきたいのは、土地付き戸建を購入した場合です。親子に限りませんが、共有名義の出資額の持分とは、土地と建物のどちらにどれだけの比率を設定するかは自由に決めることができます。
例えば、土地代:2000万円、建物代:2000万円として、持分比率は、親1:子3とします。土地と建物を均等に1:3にして共有もできますが、土地代はすべて子の名義として、建物を半分ずつにする偏った持分比率の設定もできるということです。
ここでポイントになるのが将来の相続税。不動産価格の評価では、建物は経年で価値が下がりますが、土地は必ずしも経年で価値が下がるわけではありません。将来、親が亡くなったとき、相続財産となる親の持分の不動産価格が少ないほうが相続税も低くなるという節税が考えられるのです。
ただし、土地のみの名義人は、住宅ローン控除が受けられなくなるというデメリットもあります。先々を見通して、持分比率は慎重に決めることが大事だと知っておきましょう。
不動産の相続と共有名義
上記の親子のケースのように、共有名義は単独名義よりも相続税を抑えられる可能性があります。夫婦の場合、夫の死亡時に夫の単独名義だと不動産の評価額がそのまま課税の対象となりますが、共有名義であれば、夫の持分のみが相続税の課税対象となり税額を減らすことができます。
相続財産の不動産は、複数の相続人がいれば、誰がその不動産を相続するかを遺産分割協議によって決める必要があります。
遺産分割協議で不動産の相続人が決められなければ、法定相続分通りに持分を決めて、相続人全員の共有名義で登記を行います。共有名義にすることで不公平感が少ない財産の分割相続をしたという結果になり、良き解決法だと考えることもできます。
しかし、複数の共有名義で不動産を所有する場合は、将来のリスクやトラブルが生じる可能性もあるため、検討・話し合いをしっかり行った上で結論を出すようにしましょう。
共有名義で気をつけるべきこととは?
ここでは、不動産を共有名義にする際に注意しておきたいポイントを挙げていきましょう。
夫婦が離婚となれば、財産分与が複雑になる
離婚では、夫婦で築き上げた財産を"財産分与"として清算することが必要です。
基本は、夫婦の共有財産を2分の1の割合で分割しますが、共有名義の不動産があり住宅ローンが残っている場合、その扱いが複雑になります。
ペアローンでは、夫婦それぞれが連帯保証人。住宅ローンの残金がある場合は、責務が残っています。離婚後、どちらかが住宅ローンを返済しないと、もう一方の側で支払いの義務を負うことになります。
また、離婚により住宅ローンの共有名義を単独名義に変更したい場合も、契約内容の変更にあたるため認めてもらうのが難しいことも。この場合は、住宅ローンを借り換えることでそれぞれ単独の債権にすることはできます。しかし、借入条件が違う、手数料がそれぞれ発生するなど、費用負担が必要になると考えられるでしょう
固定資産税は、共有名義の場合、連帯納付が義務付けされていて、共有者の中で決めた代表者が納付を行います。つまり、代表者であった夫が滞納すると、共有者である妻側に請求されるということになります。
離婚してふたりが暮らさなくなった不動産でも、こうした状況を整理し解決しないと支払い義務は続くのです。これらのポイントを理解した上で、共有名義を検討するようにしましょう。
売却も賃貸借も、共有者全員の同意が必要
共有名義の不動産の売却・賃貸借は、離婚したお互いの同意が必要であり、複数の共有者がいる相続不動産も全員の同意が必要になります。もし、持分比率が9:1だったとしても、共有名義はその名義人全員に署名・捺印をもらわなくてはなりません。
複数の共有者がそれぞれ離れた場所にいたり、誰か連絡が付かない状況にあったりすると不動産の売却処分も賃貸借もできず、資産活用しようと思っても障害となる可能性があるのだと理解しておきましょう。
相続による共有者の複雑化
共有名義の不動産で、所有者が死亡した場合はその持分が相続の対象となります。例えば、夫婦共有名義の不動産を所有していた場合、夫が亡くなり、子どもがいなければ、もう一方の共有者である妻に帰属されるため単独名義での所有になります。
しかし、子どもがいれば相続の対象となり、子どもの数だけ共有者も増えます。このように、世代交代は共有者が増えて持分が複雑になることが考えられます。
相続する不動産が共有名義であれば、早めに共有状態を解消しておくことが望ましいといえるでしょう。
まとめ
既に所有する不動産が共有状態になっているという場合でも、その解消方法はあります。
共有者全員が同意して第三者へ売却するというように、当事者間で話し合い解消できれば望ましい解消方法でしょう。ほかに、共有者のひとりが他の共有者から持分をすべて買い取る、土地の場合は土地を複数に分割して分筆によるそれぞれの単独名義にするなど、どういった解消方法を選べばよいのかは置かれている状況によっても違ってきます。
当事者間で解消できないようなケースは、共有不動産に関する問題を解決する専門的知識を持った弁護士などに相談することが賢明です。
夫婦共有の財産だからと共有名義を選択する際は、将来も見据えて検討しましょう。共有名義の不動産の売却を考えるのであれば、まずは不動産査定を受けることをおすすめします。
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※2024年6月1日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。