毎年3月下旬、ニュースや新聞で見かける「公示地価」というワード。
これから住まいを買う人、所有する不動産を売りたい人、どちらにとっても資産価値にどのように影響するのか気になりますよね。
公示地価とは?
「公示地価」は、住宅地、商業地、工業地など土地の用途別に分類して調査されますが、評価は建物の価値などを含まず、土地を更地として扱います。土地の売買取引をする際の目安となる価格であり、国土交通省が全国に定めている"標準地"について、毎年1月1日時点の1平方メートルあたりの地価で鑑定。似たことばに「地価公示」がありますが、これは「公示地価」を公表することを指しています。
地価の指標は他にもあります。都道府県が調査し公示地価を補完する役割も担う基準地価。国税庁が調査し相続税や固定資産税の算定に用いられる路線価。実際に取引成立した不動産価格を国土交通省が取りまとめた実勢価格。いずれも、目的や用途に応じて、官公庁や役所など公的機関が基準を設けて評価した公平性の高い土地の価格情報だといえます。
※関連記事:地価に関する詳細はこちらもご覧ください。
▶土地の価格はどう決まる?4つの価格の違いをわかりやすく解説!
公示地価の上昇!どうなる資産価値?
令和5(2023)年3月22日、国土交通省が公表した公示地価は、商業地や住宅地、工業地を合わせた全用途の全国平均が前年比1・6%アップ。2年連続で上昇となり、上昇率も拡大しました。
国土交通省によると、コロナ禍で弱含んでいた地価は、緩やかな景気回復とともに都市部を中心に上昇が継続、コロナ前の地価への回復傾向が顕著になったと分析しています。
3大都市圏の住宅地の変動率に注目すると、東京・大阪・名古屋圏ともに2年連続で上昇。その理由は、都市中心部や生活利便性に優れた地域は、低金利環境の継続や住宅取得支援施策等による効果もあり、住宅需要が堅調なこと。また、リモートワークの浸透やパワーカップル(共働き世帯)の増加など、生活スタイルの変化がニーズの多様化を促し郊外部にも上昇範囲が拡大していることが挙げられています。
不動産取引では、売り買いする双方が価格検討をするため、公示地価が売買相場に影響を与えるといわれています。全国的な地価の上昇傾向は、不動産の資産価値も高めると考えられます。
住宅地の対前年平均変動率(過去10年間)
地価上昇のメリットとデメリット
先の地価上昇理由にあった景気回復や低金利、顧客ニーズの多様化などのほか、都市開発による街力向上、公共交通機関の発展(新線・延伸・新駅等)、人口増加、インバウンド需要などが要因に挙げられます。
分かりやすい例として、令和5(2023)年の公示地価では、地方4都市(札幌・仙台・広島・福岡)の上昇率拡大がトピックに。特に、北海道はもっとも上昇率が高く、住宅地で札幌市15.0%、北広島市26.2%となりました。
札幌駅周辺では再開発や交通インフラ整備が行われ、札幌市と新千歳空港の間に位置する北広島市には新たな観光スポット「北海道ボールパークFビレッジ」が開業。これらが要因となり、住宅地の人気が上昇、周辺エリアも含めた波及効果も大きく、価格を底上げしたということになります。
では、本当に地価の上昇≒資産価値の上昇と考えてよいのでしょうか、不動産を買う側、売る側にはどんな変化があるでしょうか。売買するそれぞれの立場で、メリットデメリットを想定してみましょう。
◎買いたい!―購入希望側
資産価値が高まり、不動産価格が上昇。すると、購入を検討していた都市部の物件が予想よりも高くなり、希望エリア周辺で物件を検討せざるを得ないということも。立地条件が譲れず、購入予算が変わらなければ、広さを妥協することになるかもしれないと考えると地価上昇はデメリットだといえます。
買い替えでの購入希望の場合、所有不動産が地価上昇傾向にある立地ならばプラス要因と考えられます。予想よりも高値で取引できれば、購入予算にゆとりが持てますね。不動産を所有したまま担保として資金融資を受ける際も、評価が上がっていれば有利になるでしょう。ただし、所有不動産が下落傾向にある立地だった場合は逆の現象が起こります。
ちなみに、住宅ローンを組むときに金融機関が担保評価するのは公示価格を利用するということも知っておきたいポイントです。
◎売りたい!―売却希望側
売却を検討している方は、所有不動産の資産価値が高まれば、想定よりも高値で売却できる可能性が出てくることがメリットです。特に、何らかの理由があり地価上昇が継続している場合は、今後も上昇する可能性が見込めるため、高めに設定した売り出し価格でも買い手が見つかることもあるでしょう。
高値で売却できた場合、売却益(売却利益)が発生すると、その利益は「譲渡所得」となり、税金の支払いが必要になります。また、価格が上昇傾向にあると、売り急ぎを避けて、一旦、所有し続けることも考えますが、固定資産税の負担増も考えられます。この点はデメリットといえるでしょう。
先に、相続税や固定資産税の算定は路線価を用いると紹介しました。路線価は、公示地価を評価水準の指標としているため課税額が変わる可能性があるということです。地価が上昇すると、評価額も自動的に上昇していくため、必然的に税金が値上がりします。
後から収める税金も考慮した上で、売却時期を考えることは重要なポイントとなります。
まとめ
高額の買い物である不動産は、買い時や売り時がいつか?と判断を迷いがちです。地価の変動とは、不動産の売買を検討している方にとってタイミングを見極めるためのモノサシだといえます。
売却の好機を知り、将来の資産価値の高まりが期待できる不動産を購入するといったことに役立つ情報となるでしょう。
不動産の購入、売却を検討中という方は、関心のあるエリアや所有不動産の周辺エリアの地価情報をぜひチェックしておきましょう。
不動産の売買をお考えの方は、ぜひ一度『阪急阪神の仲介』に相談してみませんか?
※2023年4月14日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。