すまいのスタディ

2025.06.23

"定期借地権マンション"これだけは知っておきたいポイント解説

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近年、増加傾向にあるという"定期借地権マンション(以降、定借マンション)"。
分譲マンションの購入を検討していると、一度は見聞きしたことがあるでしょう。定借マンションの最大の特徴とは、建物のみを所有して土地は期限付きで借りるという権利形態にあります。今回は、定借マンションの購入を検討する際に知っておきたいポイントをまとめてみました。

"借地権"を理解するための用語解説

借地権とは、地主が所有する土地を借りて、その土地に建物を建てて利用する権利のことです。借地人(土地を借りている人)は地主に地代を支払い、その土地を使用することができます。借地権は契約の内容、その対象、用途などで種類や意味合いが異なるため、その違いを理解しておきましょう。

定期借地権と普通借地権

1992年8月から施行されている借地借家法で区分された借地権が、定期借地権と普通借地権となります。2つの借地権の大きな違いは、借地期間の更新の可否です。
定期借地権定められた借地期間満了時に、土地を更地にして地主に返還することが決められている借地権です。一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用定期借地権の3種類がありますが、主に分譲マンションの場合は"一般定期借地権"で、借地期間は50年以上となっています。
普通借地権:借地期間が当初は30年以上と決められている借地権です。地主に正当事由がない限り、借地権は自動更新されますが、その際には地代のほかに更新料を地主に支払うのが一般的です。

借地権と転借地権

分譲マンションの借地権というと、上記で説明した地主と借地人が直接契約を結ぶ定期借地権が一般的ですが、転借地権というケースもあります。
転借地権(転借権):借地人が地主の承諾を得て、第三者である転借人に土地を賃貸(転貸借地権)する場合、転借人がその土地を使用する権利のことを転借地権といいます。
定借マンションの物件概要に、『分譲後の権利形態/土地:専有面積割合による定期借地権(転借地権)の準共有(※)』といった記載がされているケースが該当します。
※通常の分譲マンションの権利形態は"所有権の共有"ですが、定借マンションの借地権の共有は"準共有"といい、法律上は共有と同じルールが適用されます。

定期借地権マンションと所有権マンションの違い

2つの違いとして、土地の取得費用が不要な定借マンションは、土地と建物を所有する通常の分譲マンションと比べて、販売価格が安いというメリットがよく語られています。しかし、近年の所有権マンションと定借マンションの価格差はそれほど大きなものではない傾向にあります。
その理由としては、借地期間が70~90年など長期化していること、比較的駅近や生活利便性の高い好立地が多いことが挙げられます。マンションの価格は、定借・所有権どちらであってもプラン、立地や周辺環境などによる影響を受けます。定借マンションを検討する際には、安さという観点だけではなく、都心部の希少立地である利用価値や、借地期間の長期化による将来の売却・賃貸といった資産活用の可能性など合理性で考えることが大切です。
定借と所有権マンションにかかる主なコスト面の違いを比較しましたので、こちらも参考にしてみてください。

定借マンションのよくある疑問

ここからは、定借マンションの検討時によくある疑問をQ&Aで確認していきましょう。

Q:定借マンションは好立地に建ちやすいといわれている理由は?
A:一例ですが、利用価値の高い都心部・駅近好立地を所有する企業があるとします。その土地に、老朽化した建物があると建て替えなどを検討せざるを得ない時がきます。資産として手放したくない場合、借地権で土地活用することで土地を売却せずに収入を得ることができます。特に、都心部の新築マンション供給が難しくなっている現状では、こうしたケースが今後も増えていく可能性があります。

Q:定借マンションに住める期間は?
A:一般定期借地権では借地期間が50年以上と定められていますが、その期間内には建物を取り壊して更地にするための期間が含まれています。概ね、1~2年程度が見込まれているため、それを踏まえておくことが必要です。

Q:定借マンションで、70年や90年の借地期間が設定されるのはなぜ?
A:マンションの構造などが進化し、耐久性が高くなっていることが挙げられます。加えて、『人生100年時代』といわれているなかで、借地期間が70年あれば、30~40代も検討しやすいことも考えられるでしょう。

Q:定借マンションの売買や賃貸で気をつけることは?
A:定期借地権は第三者に譲渡したり貸したりすることが可能です。売買では、借地権の残存期間に注目しましょう。売却の場合、残りの期間が短ければ短いほど、それだけ物件が売りにくくなると考えられます。購入する場合は、残存期間が残り10数年など短いと、住宅ローンが借りにくい場合があります。通常、住宅ローンは、土地と建物の両方に抵当権を設定し、担保とすることで利用できます。将来的に建物も取り壊すことが決まっていて、土地を借りている状態の定借マンションの残存期間が短いと、土地に抵当権が設定できないだけでなく、建物の担保価値も低くなりやすく、住宅ローンが組みづらくなる可能性があるということです。
所有する定借物件を賃貸する場合は、築年数が経っていても駅近や生活利便性に優れた立地であれば有利な運用を期待できるでしょう。また、前払い地代がある場合では、家賃収入から控除できるため節税効果が見込めるとも考えられます。

まとめ

1992年に施行された借地借家法から30数年が経過しました。施行直後に建築された借地期間が50年の定借マンションは既に折り返しの時期を迎えています。一方、近年増加している借地期間70年などの長期の定借マンションは、まだ借地期間の前半といえます。
定借マンションは、期限付き。必ず取り壊しの時期が来ます。借地期間の終盤に差しかかった際に、自分のライフプランではどのような状態を望むのか----。自分も、将来財産として引き継ぐ子世代にとっても、新たな住まいへの住み替えが必要となることも考えておかなければならないということを理解しておきましょう。
しかし、優れた立地や充実した共用施設、適正な価格といった条件次第では、魅力的な新築マンションといえることも確かでしょう。ひとつの選択肢として、十分検討の余地あるマンションだという理解が浸透されつつあるからこそ、新築マンション市場に増えてきているといえるのではないでしょうか。

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※2025年5月26日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。