ぐるり街めぐり〈東京・有楽町編〉
珈琲館 紅⿅舎(ベニシカ)
紡がれた想いが息づく、唯一無二のメニュー
JRの高架沿いを新橋方面へ歩くと、どこか懐かしさを感じる建物が見えてきます。扉を開けると「カラン、カラン」と鐘が店先で鳴り響き、柔らかな照明とアンティークな調度品がお出迎え。開業は1957(昭和32)年。「洋食店」としてオープンしたのが始まりで、1964(昭和39)年にそこから少し離れた現在の場所に、2号店としてこの『珈琲館 紅鹿舎』が誕生しました。オーナーは優しい笑顔が印象的な村上淳さん。初代オーナーである父・末吉さんと母・節子さんから経営を受け継ぎ、創業当時のものやご両親が集めてきた絵画、アンティークなどは、いまも店内に飾られています。

このお店の一番人気は『べにしか元祖ピザトースト』です。レシピは村上さんのお母様が考案したもので、いまではこのピザトーストを目当てに訪れるお客様は数知れません。村上さんにお聞きすると、「開業した当時は、東京でもイタリアンレストランは数店舗しかない時代だったそうです。ピザ好きだった母が、なんとか家庭にある材料で作れないかと、ピザ生地の代わりに食パンを使ったのが始まりでした」と話してくれました。厚切りのトーストの上にはとろとろチーズ。玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、サラミなど具材もたっぷり。日本で初めて作られたピザトーストが、村上さんのお母様の想いとともに味わえます。

コーヒーの香りに包まれ、歴史とやすらぎが溶け合う場所
コーヒーが大好きだったお父様。使っているコーヒー豆は創業時からずっと変わらないそうです。「ダッチコーヒー以外はすべてサイフォンで提供していますが、これも父のこだわりです」と村上さん。サイフォン式はコーヒー全体にまんべんなくお湯が行き渡るので、安定した味に仕上げられます。また、一定温度で短時間に抽出されるため、渋みやエグみが出にくく、すっきりした味わいに。オープン時からフードメニューが多かったことで、"食事に合うコーヒー"を追求した結果なのだとか。自慢の『べにしかブレンド』は、酸味と苦みのバランスが絶妙で調和のとれた味。軽い飲み口なのに、あと口のしっかりとしたコクが印象的。

このお店の人気のヒミツは、メニューの豊富さにもあります。なんと、ドリンクとフード合わせて約240種類。もともと洋食店が始まりだったことから、グラタンやハンバーグ、ハッシュドビーフなどの洋食を、ある日突然メニューに加えてみたのだとか。それが常連客から評判となり、以来どんどんフードメニューが拡大していきます。さらに、村上さんのお父様が甘党であったことから、甘党ならではのこだわりで誕生させたパフェやパンケーキといったスイーツも瞬く間に大人気に。なかでも、焼き立てのふっくらサクサクしたパイを使った『ベイクドパイ』は、2枚のパイの上にたっぷりの生クリームとアイス、フルーツが盛られ、そのボリュームは圧巻です。

【この街が好き/STAFF VOICE】

古き良き時代と現在が交差する有楽町
私が子どもの頃の有楽町周辺はまだお店も少なく、ビルもまばらで、のんびりとした街でした。お店の近くに空き地もあって、よく遊んだものです。やがて再開発が進み、有楽町マリオンができた頃から商業施設も充実してきて、めまぐるしく姿を変えました。ただ、当店もそうですが、新しいなかにも昔ながらのお店や建物も残っているんですよ。最先端と古き良き時代のものが融合するところが、この街の魅力なのだと思います。
珈琲館 紅⿅舎 オーナー 村上淳さん

●珈琲館 紅⿅舎
営業時間/11:00~23:00
定休日/不定休
電話/03-3502-0848
東京都千代田区有楽町1-6-8 松井ビル1F
※休業日等については、お電話にてお問い合わせください。
◇記載しています営業データ・商品・価格等は2025年11月10日時点の情報です。
◇時期によってはメニュー内容や商品・価格が変更になっている場合があります。
◇表示価格はすべて税込です。



