ぐるり街めぐり〈大阪・中津編〉
ルネ・ドゥ・ラ・パティスリー
香ばしさ、しっとりと広がる味わい...五感に響く甘いひととき
長屋が残る静かな住宅街を歩いていると、パリの街角にあるようなかわいい一軒が現れます。マドレーヌの焼型をあしらった看板が営業中の目印。扉を開けると、甘く香ばしい香りに包まれ、幸せな気分に。この店の名は『ルネ・ドゥ・ラ・パティスリー』。元・辻調理師専門学校の教員で、フランスでも研鑽を積んだ佐々木雄市さんが営むお店です。看板商品は、「この街の自慢になれば」との願いを込めた『豊崎キャラメルダクワーズ』。アーモンド生地にキャラメルバタークリームを挟んだ焼き菓子です。ふわっと軽やかな食感の秘密は、少量ずつ丁寧に仕込み、メレンゲの気泡が潰れないうちに焼き上げているから。ひと口食べるだけで、その繊細な仕事ぶりが伝わってきます。

店名にある『ルネ』とは、フランス語で"鼻"や"調香師"という意味。佐々木さんは、香りを味覚と同じくらい大切に考え、「もう一歩深いおいしさのために」、香りにこだわったお菓子づくりを行っています。「たとえばイチゴの香りひとつでも、何百もの香りのもとになる成分で構成されています。その成分の相性まで見極めて、素材を組み合わせるんです」。感性と理論の両輪で組み立てていくのが、佐々木さんのスタイル。「フードペアリング」という考え方を取り入れ、香りの共通点や同じ土地で育った素材の組み合わせなど、裏付けのある調和を大事にしています。同店のお菓子を味わう時は、まずは香りを楽しんで、そのあとじっくりと味を堪能してください。

ひと口の記憶が、香りとともにいつまでも残る
土日のみ登場する生ケーキは、常時8種ほど。なかでもこの店の魅力である"香り"を語る上で欠かせないのが、『ルネプリン』と『オペラ』です。『ルネプリン』は、希望すればバーボンウイスキーをスポイトで添えて提供してもらうこともOK。ウイスキーの芳醇な香りが、卵やカラメルのコクと重なり合い、食べ進めるごとに味の印象を変えていきます。一方の『オペラ』は、チョコレート、コーヒー、アーモンド生地を幾層にも重ねた、フランス生まれのクラシックなケーキ。深煎り豆から抽出した自家製のエッセンスで苦味を抑えつつ、香りの輪郭を際立たせています。ケーキ一つひとつに、香りの物語が丁寧に綴られているのです。

焼き菓子は、マドレーヌやフィナンシェ、カヌレなど、シンプルで親しみやすい品々が揃っています。たとえばフィナンシェは、フランスではローストしていないアーモンドプードル(粉末)を使うのが一般的ですが、日本人好みの"香ばしい風味"に近づけるため、アーモンドの実そのままをローストしてから粉砕。あえて焦がしバターは使わず、アーモンドの香りを主役に据えています。カヌレは、素材から配合に至るまで本場仕様。小麦粉やラム酒もフランスと同じものを使い、ラムの華やかな香りが印象的な余韻を残します。午後のひととき、いつでもそっと取り出して味わいたくなる...、そんな"ちょっぴり贅沢なおやつ"と出会えます。

【この街が好き/STAFF VOICE】

小さなお店と人の輪が、この街をやさしく包み込んでいるようです
周辺の住宅街を歩いていると、抹茶カフェやチャイと焼き菓子のお店、米粉マフィンのお店など、「こんなところに、こんなお店が!」と心弾む発見があります。店主の方々は地域の人たちと丁寧に関係性を育んでいて、お店同士でも互いに訪ね合ったり、いい店なら自店のお客さまにおすすめし合う、温かなつながりもあります。そんな関係性が息づく、親しみやすい空気感がこの街にはありますね。
ルネ・ドゥ・ラ・パティスリー オーナーパティシエ 佐々木雄市さん

●ルネ・ドゥ・ラ・パティスリー
営業時間/11:00~18:00
定休日/月曜・火曜・水曜
大阪市北区豊崎1-1-12
https://le-nez.jp/
https://www.instagram.com/le_nez_de_la_patisserie/
※休業日等については、インスタグラムをご確認、もしくはお問い合わせください。
◇記載しています営業データ・商品・価格等は2025年8月1日時点の情報です。
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◇表示価格はすべて税込です。