ぐるり街めぐり〈大阪・中津編〉
長屋ギャラリーift
暮らしの中で愛着が増していく、手づくりの温かさ
中津商店街を中ほどまで進み、路地を西へ入ると、突如黄色い扉と立て看板が現れます。「こんなところに?」と、自分だけが発見したような嬉しい気持ちになるこの店は、4人のものづくり作家が共同運営する、暮らしの用品店&ギャラリー『長屋ギャラリーift』です。ここは戦前から残る長屋を、友人や知人、作家仲間など、延べ180人が1年ほどかけてセルフリノベーションしたのだそう。入口の扉を開けると、外からは想像できないゆったりとした空間が広がり、その中心にはテーブルとイスが置かれ、奥には中庭の緑も見えます。玄関で靴を脱いで上がるスタイルだからでしょうか。友人のお家に招かれたような雰囲気で、妙に落ち着きます。

手づくりの温もりが伝わる美しい木製の食器は、開店当初からのメンバーである渡木玲子さんが主宰するブランド「ubdy(ウブディ)」の作品。建材や家具製作時に出る高級材「チーク」の端材を使って、バリ島の村・ウブドの職人が一つひとつ手彫りでつくり上げています。チーク材は内部に油分を多く含んでいて、耐水性・耐油性があり、水や油に強いのが特長。料理をのせるのはもちろん、洗剤が使えるので、日常使いにもぴったりなのだそう。一方で、丈夫で硬い木だからこそ、器として使えるように滑らかに仕上げるのは至難の業。板を粗彫りし、細いナイフで削り、ペーパーをかけオリーブオイルを塗って仕上げるという、熟練の職人だからこそできる技術です。手に取ってみると、その触り心地と美しさにほれぼれしますよ。

ここでの出会いが、新しい出会いにつながっていく
この店ではおよそ月1回のペースで、個展やワークショップ、イベントを行っているそう。「私たちが紹介したいと思う作家さんを全国から招いて開催してるんです」と渡木さん。モザイクガラスのコースターやリースづくりといったワークショップだけでなく、ウクレレやケーナの演奏会、陶芸やアクセサリー作家の個展などイベントもさまざま。そんなつながりの中から、作家や常連客を巻き込んで「長屋ウクレレ部」を発足。総勢30人くらいが所属し、月1回ほど自由参加で活動しているそうです。

この店の共同運営者で、常時展示・販売をしているのは、渡木さんのほかに3人。編み物作家のMiroruさんがつくるのは、麻糸のかごバッグやウブドの古布を裂いて編んだマット、韓国のスセミ糸というポリエステル製のキラキラした糸で編むポーチなど。「Monarcu-pu(モナルクープ)」さんは、イタリアで修業して身につけたモザイクガラス技法のスタンドライトやリングスタンドといったインテリア雑貨。愛媛県内子町にべにふうき専門の有機茶園を持つ「にのらく茶園」さんは、べにふうき緑茶や和紅茶。この店を訪れるだけで、個性たっぷりで魅力的な4人の世界観に出会うことができます。

【この街が好き/STAFF VOICE】

店主主催のイベントなど、街が賑わい始めています。今後が楽しみ!
大阪・梅田から徒歩圏内なのに、静かで落ち着いた街並みが魅力的です。とはいえ20年前と比べると、このあたりもお店が増えてきました。昨年は「中津を盛り上げよう!」とお店同士で協力して、地域通貨「おーきに」でのお買い物、音楽やファッションイベントの開催、付近のお店紹介マップの配布なども行いました。エリア内でのつながりが生まれ、交流が増えているので、これからどう広がっていくのかも楽しみな街なんです。
長屋ギャラリーift ubdy・渡木玲子さん(写真左)、編み物作家・Miroruさん(同右)

●長屋ギャラリーift(イフト)
営業時間/木曜・金曜12:00~17:00、土曜12:00~18:00
定休日/日曜・月曜・火曜・水曜
大阪市北区中津3-21-15
https://ift.base.ec/
https://www.instagram.com/galleryift/
※休業日等については、インスタグラムをご確認、もしくはお問い合わせください。
◇記載しています営業データ・商品・価格等は2025年5月29日時点の情報です。
◇時期によってはメニュー内容や商品・価格が変更になっている場合があります。
◇表示価格はすべて税込です。