ぐるり街めぐり〈兵庫・神戸三宮編〉
Fabulous OLD BOOK
カモの親子の物語に導かれ、めくるめくアメリカ絵本ワールドへ
うっかり見過ごしそうな鯉川筋沿いの小さなビル。4階に上がってそっとドアを開けると、店内を埋めつくす絵本や雑貨が目に飛び込んできます。扱っているのは、1940~70年代のアメリカで発行された絵本が中心。「この時代はコスト度外視で、つくりも丁寧。紙質やインク、印刷技術がいいから発色がきれいで、装丁も凝っています」と店主の村田智さん。当時のアメリカの自動車や洋服などにも通じる、ものづくりの心意気が反映されているようです。

2000年12月にトアロードで開店後、2002年現在地に移転。「四半世紀も続けられるとは」と笑う村田さんは、もとは洋書絵本の出版社に勤めていたのだそうです。アメリカ絵本に魅了されるきっかけが、『MAKE WAY FOR DUCKLINGS』という一冊でした。「ヒナたちを連れて子育てしやすい地へ移動する親カモを描いた絵本なんですが、カモの親子の行列は危険がいっぱい、だけど心優しいおまわりさんや街の人たちが協力してくれて...。シンプルなストーリーですが、絵のタッチや色合い、登場人物や出来事、すべてが温かい空気に包まれていて」。この絵本との出会いをきっかけに、同時代の絵本をたくさん見るようになり、どんどん惹かれていったといいます。

音楽&古着好き少年が、絵本を通じアメリカ文化を紹介する伝道師に
店内には、絵本と同時代の雑誌や雑貨も数多く並んでいます。これらを通じて、「若い人たちにも古き佳き時代のアメリカ文化を知ってほしい」のだそう。そんな村田さんがアメリカ文化を好きになったのは、なんと小学1年生の夏休み。アメリカに住むいとこを訪ねてニュージャージーへ旅したときの、ビリヤードやボートで遊んだ楽しい思い出が忘れられず...。もっとアメリカに近づきたい、英語を話せるようになりたいと16歳で再渡米、21歳のときには長距離バスでアメリカ横断の旅に出ます。学生時代に夢中になった50年代のアメリカの音楽や洋服が「今も大好き」で、デザインや映画のビジュアルブックを経て、絵本へとつながったそうです。

絵本の品揃えは、村田さんの好みを熟知した旧知のバイヤーや、現在もアメリカで暮らすいとこが直送してくれたり、知り合いの書店から仕入れたり。数年前までは現地で買い付けもしていましたが、コロナ以降は渡米できていないそう。「絵本は毎月数十冊ほど仕入れて、常時約3千冊をストック。雑貨は60年代の子ども部屋をイメージして集めています」。新規入荷品、季節・行事、人気キャラクターなど、コーナーを設けたフェアも定期的に開催。店名(Fabulous)のとおり、素晴らしい、とても愉快なアメリカ絵本。「たかがモノですが、心が豊かになる宝物として、よい出会いをしてもらえたらいいですね」。

【この街が好き/STAFF VOICE】

懐かしくて、人懐っこくて。いちばん好きな神戸の街で店を開きたかった
中華街のある港町は、私の故郷の神奈川に似た懐かしさがあり、まわりの人もあたたかい。東京にも住んだことがありますが、かみさんの地元でもある神戸はいちばん好きな街ですね。独立開業するならやっぱりここだなと思っていました。このあたりは、駅近なのにごちゃごちゃしてなくて落ち着きます。いいお店もいっぱいあって、心地よい街です。
Fabulous OLD BOOK 店主 村田智さん

●Fabulous OLD BOOK
営業時間/13:00~19:00
定休日/不定休(主に水曜)
電話/078-327-7883
神戸市中央区下山手通4-1-19 西阪ビル4F
https://fobook.ko-co.jp
※休業日等については、ホームページをご確認、もしくはお問い合わせください。
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