すまいのスタディ

2018.03.28

「売る or 貸す」どっちがおトク?見極めポイント

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愛着のあるマンションを手放すときに「売るべき?それとも貸すべき?」と悩む人は多いでしょう。売却すれば一時的にお金が入るメリットもあるものの、貸せば賃貸収入という「不労所得」が得られるのも魅力的に思えますよね。

ただ、どちらを選ぶにしても損をしたくないという気持ちもあって、なかなか判断がつきにくいもの...。

どちらがいいかはケースバイケースで「立地がいいから今売れば高値」「住宅ローンの残債があるから売却しても追加資金が必要」「将来的な目線で考えると賃貸にすればお得」「貸した場合、管理費や固定資産税の負担が大きいかも」「貸す場合の空室リスクが心配」など、それぞれの状況によって選択肢も限られてくるでしょう。

マンションを「売るか貸すか」は、マンションの状況や将来的な視点、そして「リスク」も交えながら慎重に判断をしていきましょう。


マンションを売る場合のメリット

マンションを売った場合に考えられる一般的なメリットについて説明していきます。

主なメリット

(1)売却すれば現金になる
売却すれば一時的に大きなお金が入るのが最も嬉しいメリットでしょう。

新たにマイホームを購入する、賃貸に住む、実家に戻るなど状況はそれぞれですが、いずれのパターンも引っ越しなどで一時的にお金が必要でしょう。売却したお金を新しい生活にまわせるのが助かりますよね。

ただ、不動産会社を通じて買い手を見つければ仲介手数料、売買契約書に貼る印紙代、抵当権がついていれば抵当権抹消等登記を依頼する司法書士への手数料や金融機関への手数料が必要です。仲介手数料は売買価格に応じた金額ですが、売買代金の3%+6万円が上限となります(売買価格400万円を超える場合)。
また、住宅ローンの残債があれば、売却代金や自己資金で一括返済しなければなりません。売却代金はすべて手取りとならず、諸費用を差し引いた額が手元に残ることを知っておきましょう。

(2)管理費や修繕積立金などマンションを維持する費用が今後必要ない
マンションは持っているだけでさまざまなコストがかかります。
所有者に支払い義務が発生する「固定資産税」、維持費として月々の「管理費・修繕積立金」などは、売却すれば今後必要ありません。

(3)需要と供給、今が売り時?
中古マンションを購入する人の大半は「なるべく築年数が浅い物件がいい」と考えています。そのため、築年数が浅い物件を売るという「供給」、できるだけ築浅物件が欲しいという「需要」のバランスがよいため、新しいうちに売り出せば売りやすくなるでしょう。また、築年数が新しいほど資産価値を維持しているため、早めに売れば高値での売却が期待できます。

売る時の注意点

売却するときにはローンの残債や名義について事前に確認が必要です。

・ローン残債が売却金額を上回っているケース
売却代金で残債を一括で完済できれば問題ありませんが、残債が売却金額より上回るケースは注意が必要です。一括で返せなければ「抵当権」が外せず、売却は不可能となってしまいます。

ただ、上回っている残債については預貯金で返済する、住み替えローンを利用する(住み替えで新居を購入する場合)などの方法もあります。
審査基準は厳しくなりますが、銀行に相談してみるのもいいでしょう。

・共有名義の場合
夫婦や親子というように共有名義でマンションを購入しているケースも少なくありません。基本的に、共有者全員の了承が得られれば売却することには何の問題もないでしょう。

ただ、一方が反対しているなら売却はできません。特に共有名義となっていた夫婦が離婚成立した後に売却をするなど、連絡がつきにくく売却がスムーズにできないケースもあります。

マンションを貸す場合のメリット

貸した場合のメリットについて見ていきましょう。

主なメリット

(1)資産を持ち続けられる
賃貸収入を得ながら、資産を持ち続けることができます。貸す時には敷金・礼金、毎月の賃料などの収入があります。

また、分譲マンションは通常の賃貸マンションよりも間取りや設備が豪華。そのため、賃料を高く設定できるメリットがあります。

(2)いずれ住む状況になっても大丈夫
マンションを売るか貸すかで悩んでいる人のなかには、転勤などで期間限定で遠方へ引越しをする人もいるでしょう。そんなときには、その期間だけ「貸す」という選択をすれば、転勤終了後に再び住むことができます。

(3)ローン完済時には融資を受けるための担保にできる
住宅ローンの返済が終われば所有するマンションの抵当権は外れます。つまり、今後、何かの事情があって銀行からの融資を受けるときには、マンションを担保にすることもできます。

貸す時の注意点

マンションを賃貸に出すのは大家としての責任や手間、コストも発生します。

・維持管理費用の発生と大家業務の手間
賃貸は、大家としての維持管理の責任を負うことになります。新しい借主が入居するたび、部屋の壁紙を貼り直す、設備の故障対応など大家業務をこなさなければなりません。借りた人が問題なく住んでくれればいいのですが、近隣トラブルを起こすこともあるかもしれません。大家としてトラブル対応の手間はかなりの負担です。

自身で大家業をするより、信頼できる管理会社に委託すれば委託管理費はかかりますが、煩雑な管理業務を代行してもらえるので安心して賃貸運営を続けられます。

・「自分が住みたい」「売却したい」という事情ができても入居者を退去させにくい
通常の賃貸借契約では、法律によって借主の権利が厚く保護されています。そのため、基本的には借主が自ら申し出ない限り退去をさせることは難しいでしょう。

ただし、期間限定で貸し出す「定期借家契約」なら、決まった契約期間満了後には退去させることができます。一般賃貸借契約に比べると賃料が安くなる傾向がありますが、いずれ住みたいなど事情がある場合は、初めからこの契約を検討しておくと良いでしょう。

・賃貸収入は確定申告しなければならない
借主がいれば賃貸収入が入るので「収入」として確定申告しなければなりません。固定資産税や管理費、リフォーム代などは経費にできますが、収入や支出をしっかり管理しなければならず面倒と感じる人も多いでしょう。

・空き室が出ると賃貸収入がゼロ
入居している人が退去した後、次の借り手が見つからないと賃貸収入が途絶えます。ローンを払っている場合には、家計が圧迫されるでしょう。

・将来の売却が難しくなる
貸し出し中のマンションを将来売却するときは「収益物件」としての査定額で資産評価されるので居住用のマンションとして売るよりも査定額が低くなり、損をする可能性があります。また、通常の住宅ローンが組めないため、「投資用マンション」として買い手は投資家・不動産会社などに限定され、売却はスムーズにいかないことも多いでしょう。

立地やエリアからの見極め

「売却代金が入る」「家賃収入が得られる」という目先の利益だけに注目するかもしれませんが、「どちらが得なのか?」はそれぞれの立地や環境とも深く関係しています。どちらにするか迷ったら現実的なところで比較検討しましょう。

立地や環境を理解しておく

駅や商業施設に近く、利便性のいい「好立地」な条件なら借手も見つかりやすく家賃収入が持続する傾向にあるでしょう。

一方、駅や学校から遠いなど不便な立地だと空き室のリスクが高まります。空き室が続けば、管理費などの負担が生活を圧迫するので、早めに売った方がいいかもしれません。

マンションPERで試算する

賃貸で貸し出すときには、「マンションPER」で判断するのもひとつの方法です。
これは、マンション価格を回収する期間を数値化したもので「マンションPER=マンション価格÷(月額賃料×12)」で計算できます。数値が小さいほど短期間で回収が可能ということで、将来的な利益を考えると賃貸に出せば金銭的にはお得な可能性があります。

まとめ

「売る」「貸す」については、それぞれにメリットだけでなくリスクもあります。賃貸に出せば家賃収入が魅力ですが、貸した側の責任という精神的な負担もプラスされることになります。住む予定がないマンションなら築年数が浅いうちに売却するのもいいかもしれません。

いずれにしても安易に考えずに、将来的なライフプランやリスクも把握し慎重に考えていきましょう。

※2018年3月28日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。