すまいのスタディ

2022.08.15

ZEHはアタリマエに。省エネ住宅は脱炭素社会の必須条件

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2022年6月、建築物省エネ法が改正されました。これまで床面積300㎡以上の建築物にのみ義務付けられていた省エネ基準への適合が、2025年度以降は住宅を含めたすべての建築物が対象となります。省エネ法の基準に適合した住宅は、エネルギー消費の削減につながるだけでなく、住まいとしても快適な居住空間を得られます。この記事では、法改正の背景や改正後の住まいに暮らすことのメリットなどをお伝えしていきます。

世界中で脱炭素社会を目指すのはなぜ?

世界各国が脱炭素社会に取り組む背景には、既にご承知のように深刻化する地球温暖化があります。日本でも2020年10月に「2050年を目途に、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という脱炭素社会を目指す宣言をしています。
気温の上昇が続いている地球は、気候変動による豪雨や熱波、大規模な水害や山火事など人類の暮らしや命に影響を及ぼしています。その地球温暖化の原因が温室効果ガスの排出なのです。温室効果ガスは二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素、フロン類があり、とりわけ影響力が大きいCO2を削減することが重要課題となっています。
CO2の削減といってもゼロにすることは難しく、排出量の削減と同時に排出せざるを得ないCO2を回収して、実質的にゼロにするという考え方です。最近では「CO2実質ゼロ」を意味する脱炭素社会と同義語として、CO2の排出量と吸収量を相殺してゼロにする「カーボンニュートラル」や、排出・廃棄物を最小限に抑えながら資源を有効利用する循環型社会「ゼロエミッション」もよく聞く言葉となりました。

■住まいの「脱炭素化」はなぜ推進されているのか?

住宅をはじめとした建築物のサイクルは「建てる、暮らす(使う)、壊す」の繰り返しです。このプロセスで排出される多くのCO2を削減するために、建築物の長寿命化はとても大切なことだといえます。
また、日々の暮らしで欠かすことのできない電気やガスの供給には多くのエネルギーが必要であり、同時にCO2を発生させています。国立環境研究所の調査によれば、家庭から排出されているCO2全体のうち、照明・電化製品が32.4%、冷暖房で約18.5%※となっています。断熱性の高い住まい、省エネ性能の高い家電・設備を取り入れるなどの脱炭素対策は、もはや未来のための必然といえるでしょう。3割以上を占める照明・家電製品は太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用することで削減できます。給湯設備もガスから電気に置き換えれば削減が可能です。しかし、冷暖房の脱炭素化のためには、使用する機器そのものだけでなく住宅の省エネ性能を高める高断熱化を避けることはできないのです。

▶※参照元: 温室効果ガスインベントリ| 温室効果ガスインベントリオフィス|国立環境研究所 (nies.go.jp)

省エネ法の改正で、住まいはどうなる?

省エネ法は、オイルショックを契機に1980年に制定され、これまでも改正が重ねられてきました。今回の改正では、省エネ対策の加速と木材利用の促進という2つの柱が掲げられています。すべての建築物に適用となる省エネ基準とは何かを確認してみましょう。

省エネ基準の基本は、①外皮性能と②一次エネルギー消費量に分かれています。

①外皮性能とは、住宅の内と外を隔てる箇所を指し、壁や屋根、窓や玄関などが挙げられます。温度が低いところへ移動する性質を持つ"熱"は、冬は外に逃げ、冷房の効いた夏は外から侵入してきます。この出入りに影響する外皮の断熱性や気密性を高めることで省エネ性能の高い住宅となります。

②一次エネルギー消費量とは、「一次エネルギー」に分類される石油・石炭・天然ガス等の化石燃料、原子力の燃料であるウランなどの消費量のことです。日常で使用されている電気・ガソリン・灯油・都市ガスなどのエネルギーは、一次エネルギーを利用しやすく加工などを施した「二次エネルギー」となります。言うまでもないことですが、「二次エネルギー」の削減は、「一次エネルギー」の削減に直結しています。

■注目度が高まるZEHとは?

基準となる①②を満たす住宅の中でも近年、注目されているのがZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)です。ZEHとは、外皮性能を向上し省エネ効率の良い設備を導入、太陽光発電などによってエネルギーを創り出し、冷暖房や照明、給湯などの一次エネルギー消費量を実質的にゼロ以下にする高性能な住宅となります。
省エネ対策を加速する方針のもと、省エネ基準は既に段階的に引き上げることが発表されています。将来的に、住宅の省エネ性能がより高い水準を求められる時代になることは住まいを検討する方にとって忘れてはならないポイントとなるでしょう。

◎2030年度:ZEH/ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス/ビル)水準の省エネルギー性能への引き上げと基準適合の義務化
◎2050年度:住宅・建築物のストック平均でZEH/ZEB水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す

▶参照元:建築:脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について - 国土交通省 (mlit.go.jp)
改正建築物省エネ法 - 国土交通省 (mlit.go.jp)

次世代のアタリマエ。高性能住宅・ZEHのメリットとは?

省エネ基準の適合義務化によって、住宅購入検討者が最も心配になるのはコストアップではないでしょうか。法改正などで新たな制度が導入される場合、同時に緩和措置として減税や補助金といった政策が並行します。考えるべきは、住宅の省エネ性能が上がることでどんなメリットがあるか...。大きくは3つの点が挙げられます。

1)光熱費の削減
断熱性能が高いため、快適な室温を保ちやすく冷暖房の利用頻度を下げられるでしょう。あわせて、省エネ性能の高い冷暖房設備は少ない消費エネルギーで稼働できます。さらに、太陽光発電などによる創エネが加われ
ば、電力自給率もアップし購入電力を抑えることで光熱費を削減できます。

2)災害時の電力利用
地震や台風などの自然災害による停電時でも電気が使用できます。蓄電池を組み合わせれば、創エネを蓄えることができより安心感も高まります。

3)四季の気温差が少なく快適
高断熱により、夏の暑さや冬の寒さに影響されることなく室温が安定します。そのため、ヒートショックに代表される部屋間の温度差による体温調節や血圧の変動といった負担が軽減されます。健康にもよい快適な暮らしが送れるでしょう。

まとめ

建築物省エネ法の改正により省エネ性能の高い住宅の普及は加速していきます。高品質かつ高性能な住宅であることは、建物としての長寿命化も期待され、不動産資産の評価でも有利に働く可能性もあります。これから住まいを検討中という方は、省エネ法の基準に適合した住宅であるかという点もぜひ確認してください。
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※2022年8月15日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。