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2025.12.11

不動産鑑定に必要な費用はいくら?不動産無料査定との違いも解説

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不動産査定に必要な費用について解説します。不動産仲介会社による査定はなぜ無料なのか、一方で不動産鑑定士による不動産鑑定書はどのような時に必要で費用相場はいくらくらいなのかを詳しく説明します。この記事を読めば、あなたの状況にあった査定方法が分かり、安心して不動産売却の準備を進められます。

不動産査定の費用は無料?有料? 2種類の査定方法
•不動産会社による「無料査定」
•不動産鑑定士による「有料査定(鑑定)」
不動産会社による査定が無料である理由
•不動産売買の媒介契約に繋げるため
•法律で報酬が定められているため
有料の不動産査定(鑑定)が必要となる具体的なケース
•相続で遺産分割協議を行うケース
•離婚で財産分与を行うケース
•親族間や会社間で売買するケース
•裁判や税務申告で公的な証明が必要なケース
不動産鑑定士による有料の不動産査定(鑑定)に必要となる費用の相場
•鑑定評価書の費用は25万円程度から
•調査報告書の費用は鑑定評価書より割安
【目的別】無料査定と有料査定(鑑定)の選び方
•不動産の売却を検討しているなら「無料査定」
•法的な証明や客観的な価値把握なら「有料査定(鑑定)」
不動産査定を依頼する際の流れと注意点
•地域に根差した不動産会社に査定を依頼する
•査定額の根拠を確認する
•査定額が売却価格ではないことを理解する
まとめ

不動産を売却しようと考えたとき、まず気になるのが「査定に費用は発生するのか?」という点ではないでしょうか。結論から言うと、不動産査定には「無料」の場合と「有料」の場合があります。売却を目的とするのか、あるいは法的な証明が必要なのか、その目的によって選ぶべき査定方法は異なります。この記事では、不動産査定の費用の違いや、それぞれの特徴、料金相場、そして目的別の選び方について、分かりやすく解説していきます。

不動産査定の費用は無料?有料?2種類の査定方法

不動産の価値を調べる方法には、大きく分けて不動産仲介会社が行う「無料査定」と、不動産鑑定士が行う「有料査定(鑑定)」の2種類が存在します。どちらを選ぶべきかは、査定をする目的によって大きく異なります。まずは、それぞれの特徴を理解し、自分の状況に合った方法を見極めることが重要です。

不動産会社による「無料査定」

一般的に「不動産査定」と言うと、多くはこちらを指します。不動産仲介会社が、所有する不動産が「どのくらいの価格で売れそうなのか」について、周辺取引事例を基に算出するものです。これは不動産仲介会社が提供するサービスであるため、費用は発生しません。主に、不動産の売却を検討している人が、おおよその相場を知るために利用します。

不動産鑑定士による「有料査定(鑑定)」

「鑑定」とも呼ばれるこの方法は、国家資格を持つ不動産鑑定士が不動産の適正な価値を評価するものです。法律に基づいた基準で客観的に鑑定額を算出するため、その鑑定書は公的な証明力を持つことが特徴です。そのため、不動産鑑定士への報酬として費用が発生します。相続や財産分与など、法的な場面で不動産の価値を証明する必要がある場合に利用されます。

不動産会社による査定が無料である理由

なぜ不動産仲介会社は、専門的な知識が必要な査定を無料で行ってくれるのでしょうか。その背景には、不動産仲介会社のビジネスモデルと法律が関係しています。無料で提供されるからといって、不安に思う必要はありません。その理由を正しく理解しておきましょう。

不動産売買の媒介契約に繋げるため

不動産仲介会社にとって、査定は営業活動の一環です。査定をきっかけに不動産の所有者との接点を持ち、自社のサービスや強みをアピールします。そして、最終的にその不動産の売却活動を任せてもらう「媒介契約」を結ぶことを目的としています。売買が成立すれば、不動産会社は成功報酬として仲介手数料を得ることができます。

法律で報酬が定められているため

宅地建物取引業法では、不動産仲介会社が受け取れる報酬は「売買・交換・貸借の代理または媒介」によるもの、つまり仲介手数料などに限定されています。査定業務そのもので報酬を受け取ることは認められていません。そのため、不動産売却の前段階である査定は、無料で提供されるのが一般的です。

参考:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法第46条(報酬)」

有料の不動産査定(鑑定)が必要となる具体的なケース

一般的に不動産の価格を知りたい場合では、無料査定で十分な場合が多い一方で、特定の状況下では費用を払ってでも不動産鑑定士による有料の鑑定評価書を取得する必要があります。それは、当事者間だけでなく、裁判所や税務署といった第三者に対して、不動産の客観的な価値を公平に示す必要がある場合です。

相続で遺産分割協議を行うケース

例えば遺産に不動産が含まれる場合、相続人の間で公平に分割するために、その不動産の客観的な価値を確定させる必要があります。特に、不動産を特定の相続人が受け継ぎ、他の相続人には相当額の現金を支払う「代償分割」を行う際には、相続人の間の合意により固定資産評価額、相続税評価額、不動産業者の査定額、不動産鑑定士の鑑定評価額などから評価方法を選択します。鑑定評価額は、相続人の間で評価方法について合意が得られない場合や調停・審判に至った場合に用いられる方法の一つです。

参考:国税庁「No.4173代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」

離婚で財産分与を行うケース

離婚する際には、婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産を分け合う「財産分与」が行われることになります。持ち家などの不動産は財産分与の対象となり、その価値を基準に分与額を決定します。夫婦間で評価額の合意が難しい場合や、裁判所での調停・審判に移行した場合には、固定資産税評価証明書や不動産業者による査定書、場合によっては不動産鑑定士による鑑定評価書などが証拠として用いられます。

参考:法務省「財産分与」

親族間や会社間で売買するケース

親子や兄弟などの親族間、あるいは法人とその役員との間で不動産を売買する際、市場価格から著しくかい離した金額で取引を行うと、税務署から「贈与」とみなされ、思わぬ贈与税が課されるリスクがあります。不動産鑑定士に適正な時価を評価してもらい、その評価額に基づいて売買価格を設定することで、税務上のトラブルを未然に防ぐことができます。

参考:国税庁「No.4423個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
参考:国税庁「No.6321法人の役員に対する贈与・低額譲渡の取扱い」

裁判や税務申告で公的な証明が必要なケース

借地の地代や借家の家賃の増減額請求に関する訴訟、あるいは相続税や贈与税の申告において、不動産の評価額が税務署の見解と異なる場合など、裁判所や税務署に対して不動産の適正な価値を主張する際には、公的な証明力を持つ不動産鑑定評価書が有効な証拠資料となります。

参考:国土交通省「継続賃料にかかる鑑定評価の方法等の検討」
参考:国税庁「財産評価基本通達の定めによらない財産の評価について」

不動産鑑定士による有料の不動産査定(鑑定)に必要となる費用の相場

有料査定(鑑定)を依頼する場合、その費用はどのくらいかかるのでしょうか。不動産鑑定士に依頼する際の成果物には、主に「不動産鑑定評価書」と「調査報告書」の2種類があり、それぞれ費用が異なります。依頼する目的や必要な証明内容に応じて選択することが大切です。

鑑定評価書の費用は25万円程度から

公的な証明力を持ち、税務署や裁判所への提出が可能な「不動産鑑定評価書」の作成費用は、物件の種類や規模、評価額、調査の難易度によって変動します。例えば、評価額が高い物件や、権利関係が複雑な物件の場合は、高額になることもあります。

調査報告書の費用は鑑定評価書より割安

「調査報告書」は、不動産鑑定評価書ほどの厳密な手続きを踏まず、より簡易的な調査に基づいて作成される書類です。そのため、公的な証明力はありませんが、企業が内部資料として資産価値を把握したい場合や、個人が参考として評価額を知りたい場合などに利用されます。費用は不動産鑑定評価書に比べて安くなります。

【目的別】無料査定と有料査定(鑑定)の選び方

ここまで解説してきた内容を踏まえ、ご自身の目的や状況に応じて、どちらの査定方法を選ぶべきかが見えてきたのではないでしょうか。

不動産の売却を検討しているなら「無料査定」

不動産の売却を考えており、「自宅が今いくらで売れるのか知りたい」「売却資金で次の住まいを考えたい」という目的であれば、不動産仲介会社による無料査定が適しています。対象不動産の存するエリアを営業活動圏に持つ不動産仲介会社に依頼すれば、おおよその売却相場を把握できます。販売戦略や担当者の対応を確認いただくことで、信頼できる不動産仲介会社のパートナー探しにも繋がります。

法的な証明や客観的な価値把握なら「有料査定(鑑定)」

一方で、不動産の売却が直接の目的ではなく、相続、離婚、親族間売買といった法的な手続きや、税務申告において、利害関係のない第三者による客観的で公平な価値証明が有効な場合においては、不動産鑑定士による有料査定(鑑定)を選択することで、信頼性の高い評価書により、手続きを円滑に進めることに繋がります。ただし、相続税の評価では路線価方式や倍率方式による評価が原則であり、鑑定評価書が必須ということではありません。

不動産査定を依頼する際の流れと注意点

一般的に不動産の価格を知りたい場合、不動産査定を依頼することになるのですが、より正確な査定額を把握し、スムーズに次のステップへ進むために、いくつか押さえておきたいポイントがあります。特に無料査定を依頼する際には、以下の点に注意しましょう。

【関連記事】不動産査定の方法を徹底解説!種類や流れ、注意点を押さえて賢く売却|すまいのスタディ|阪急阪神すまいのコンシェル

地域に根差した不動産会社に査定を依頼する

査定額は不動産仲介会社によって差が出ることがありますので、対象不動産エリアを営業圏としている不動産仲介会社に査定を依頼しましょう。ご自身の不動産の適正な相場観を養うことができます。

査定額の根拠を確認する

提示された査定額の高さだけで不動産仲介会社を決めるのは避けましょう。なぜその査定額になったのか、具体的な根拠を必ず確認してください。「周辺のこの物件がこの価格で売れたので」「この物件のこの点を高く評価しました」といったように、エリアに密着した明確な説明ができる担当者は信頼できる可能性が高いです。

【関連記事】不動産査定書の見方を徹底解説!チェックすべき5つのポイントとは?|すまいのスタディ|阪急阪神すまいのコンシェル

査定額が売却価格ではないことを理解する

不動産会社が提示する査定額は、あくまで「この価格ならインターネット広告等通常の営業活動を行い、3ヶ月程度で売却できると見込まれる価格」であり、その価格での売却を保証するものではありません。最終的な売却価格は、市場の動向や購入希望者との交渉によって決まります。査定額は、売り出し価格を決めるための重要な参考情報として捉えましょう。

まとめ

不動産査定の費用は、目的によって「無料」と「有料」に分かれます。一般的な不動産の売却を検討している場合は不動産会社の「無料査定」を、相続や離婚などで公的な証明が必要な場合は不動産鑑定士による「有料査定(鑑定)」を利用するのが基本です。
ご自身の目的に合った査定方法を選ぶことが、納得のいく不動産価格を知る第一歩となります。この記事で得た知識を活用し、準備を進めてください。

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