すまいのスタディ

2024.06.15

身体にいい、"オイル(油)"の選び方

[画像]

"充実した暮らし"に必要なものってなんでしょうか。
家族、やりがいのある仕事、快適な住まい、お金、趣味...、
それぞれの考えがありますね。
では、その暮らしを支える元になるものは?
と問えば、"健康"が真っ先に思い浮かぶという方も多いでしょう。

健康のために身体に気を遣う方は、
 "良質な油"を食事で摂取するように心がけていますね。
でも、スーパーなどにある食用油は、種類も増えて、違いも分かりにくい。
「ヘルシーで身体にいい」というイメージだけで選んでいませんか。

今回は、"健康な身体"のために知っておきたい"オイル(油)"のお話。
年間600人以上の保険指導を行っている管理栄養士の窪田あい先生に
"オイル(油)"の選び方を教えていただきました。

高カロリーだから"オイル(油)"は身体に悪いといわれるのでしょうか?

『オリーブオイルやアマニ油は、ヘルシーで身体にも良いけど、
バターはカロリーが高いし、身体にも良くないわ』。
こんな会話を聞いたことありませんか?よくあるイメージの話ですね。
ここから先生に聞いてみましょう。

Teacher's answer /"ヘルシー=低カロリー"だけで油を決めてはダメ!

オリーブオイルやアマニ油は、大さじ一杯あたり約110kcal。
一方、バターは、大さじ一杯あたり約90kcal。
意外なことに、バターの方がカロリーは低いんです。

健康に良い(=ヘルシー)と言われているものでも、カロリーが高いものもあれば低いものもあります。
近年は、「健康に良い(=ヘルシー)」という言葉が、「低カロリー」という意味で使われがちで、これがバターへの誤解の原因といえるでしょう。

カロリーとはエネルギーのことで、エネルギーを作り出す栄養素は「炭水化物、たんぱく質、脂質」の3つだけです。
1gあたりのエネルギー計算は、「炭水化物=約4kcal、たんぱく質=約4kcal、脂質=約9kcal」となります。
脂質がほぼ100%のオリーブオイルやアマニ油に対して、バターは牛乳を分離させたクリームなので、脂質以外にタンパク質などが含まれ、同じグラム数で算出すると、オリーブオイルやアマニ油よりもカロリーが低くなるのです。

どうしてバターが悪者になってしまうのでしょうか?

確かに、"オイル(油)"はどれもカロリーが高いですよね。
バターだけが身体に悪いわけではないのでは?

Teacher's answer /飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸。どちらを多く含むか!

脂質を多く含む油脂類は、少量で高カロリーなため悪者にされがちです。
しかし油脂類には、細胞膜の材料になったり、ビタミンA・D・E・Kの吸収を助けたり、性ホルモンの材料になったりと、人間の身体を構成するのに非常に重要な役割があります。

オリーブオイルは一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など/約70%)と呼ばれる脂肪酸を多く含み、血中のLDL(悪玉)コレステロールを上げにくいという研究結果があります。
また抗酸化作用の強いビタミンEやポリフェノールが多く含まれ、動脈硬化予防、高血圧予防、美肌効果などが期待されます。

アマニ油は、オメガ3とも呼ばれているn-3系の多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸など/約70%)を多く含み、血中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減少させ、HDL(善玉)コレステロールを上昇させる働きがあります。

ではなぜ、バターは体に悪いと言われるのか?
バターは、たんぱく質を含み、抗酸化作用の強いビタミンE、皮膚や粘膜を構成するビタミンA、成長ホルモンの分泌や筋肉収縮に必要不可欠なカルシウムなど多くの栄養素を含みます。
一方で、飽和脂肪酸(パルミチン酸など/約50%)を多く含んでいることが"悪者"にされる原因です。
「飽和脂肪酸を摂りすぎると、LDLコレステロールを上昇させる」という多くの研究結果があり、一部では、心筋梗塞や糖尿病、乳がんや大腸がんとの関連説も出ています。

次の図をぜひ参考にしてください。

※参考文献:『日本人の食品摂取基準』を参考に作成

"オイル(油)"選びは、脂肪酸の種類を知ることが大事ということでしょうか?

バターは身体のために必要な栄養素も多く含まれているけれど、
摂り過ぎが身体によくない飽和脂肪酸も多く含まれている。
つまり、どんな脂肪酸の種類が含まれているかを知って選ぶことが大事なんですね。

Teacher's answer /プラスするのではなく"オイル(油)"を置き換えることがポイント!

脂質に関する一番の健康問題は『摂りすぎ(とくに飽和脂肪酸)』です。
適度な量であれば、大きな問題はありませんが、摂りすぎれば肥満の原因になり、さまざまな疾患のリスクが高まります。
現代社会の食事は、肉や卵、乳製品、揚げ物やスナック菓子やスイーツなど飽和脂肪酸を過剰に摂る傾向があり、魚を摂る機会が減っていることからn-3系脂肪酸(オメガ3)の摂取量が減少傾向にあるのです。

理想的な脂質の摂取量を考える上では、脂肪酸の種類を知るだけでなく、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えるということが大事です。
脂肪酸の置き換えは、心筋梗塞の発症率や死亡率を減少させると多くの研究でわかっています。
具体的には、肉料理を減らし、魚料理を増やす。バターはやめて、ごま油やコーン油で調理する。サラダには、マヨネーズではなくアマニ油を使ったドレッシングに。
こうして、"オイル(油)"を置き換えることを心掛けて選ぶと、それぞれの脂肪酸を適量に摂取できるようになるはずですよ。

+One Point/まずは、食生活の見直しを

窪田先生は、ライフスタイルにあわせた体重コントロール法でダイエットサポートなども行っているとのこと。
「どんなに身体に良いといわれる"オイル(油)"であっても、これまでの食事にただプラスするだけでは、逆に"太る"原因になる」といいます。

いま、食事のメインは肉と魚、どちらの料理が多いのか。"オイル(油)"を使う調理法の献立は多くないか。というように、食生活そのものを見直してから、置き換える"オイル(油)"を選んでいくことが大事ですね。

Teacher's Profile/医療機関のコンサルティング会社である株式会社メディヴァにて年間のべ600人以上の保険指導を行う。また、医学や栄養学を一般の方にもっとわかりやすく伝えたいと、さまざまな講座も企画している。
『参考文献』
・伊藤貞嘉,佐々木敏 監修:日本人の食事摂取基準 2020年版,第一出版
・上西一弘 著:食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第3版 女子栄養大学出版
・香川明夫 監修:七訂 食品成分表2020女子栄養大学出版
・国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の素材情報データベース

※情報提供日:2024年6月1日