すまいのスタディ

2024.03.14

同居よりも近居!親と子のちょうどいい距離感

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"スープの冷めない距離"という言葉があります。近すぎず、遠からず。スープが冷めない程度の程よい距離感が、親と子の住まいには望ましいということ。

親も子もお互いに年齢を重ねると、健康や生活全般の様子が気になりますよね。
子育てや介護などお互いに支援やサポートを必要とするならば、同居という選択肢も検討せざるを得ません。
ですが、同居よりも近居を望む世帯が増えているのはなぜでしょうか。

今回の記事では、近居のメリットについて考えていきましょう。

そもそも、近居とは?

国土交通省が調査する定義による「近居」とは、住居は異なるものの、日常的な往来ができる範囲に居住することを指しています。具体的には、「車・電車で1時間以内」の範囲まで。

国土交通省が令和2年に発表した『平成30年住生活総合調査結果』によれば、「高齢期における子との住まい方(距離)の希望」では、「子と同居する」は10年前の17.1%から11.6%と5.5ポイント減少、一方、「近居」に該当する「子と同じ敷地内の別の住宅や同じ住棟内の別の住戸に住む」と「徒歩5分程度」、「片道15分未満」「片道1時間未満」はそれぞれ割合が上昇し、合計で28.3%、10年前の23.3%から5ポイント上昇しています※。

必ずしも子世帯との同居を望まない親世帯は増えているといえるでしょう。
育児や家事といった生活面・経済面で子世帯を支えやすいのは同居です。
しかし、近いからこそお互いを干渉しやすく、それがストレスになることもあります。
ライフスタイルや価値観は親子でも違うもの。程よい距離感の近居がちょうどいいと考えられるのです。
※出典元:国土交通省:平成30年住生活総合調査(確報)(mlit.go.jp)

良好な近居ライフのための3か条

親と子の世帯が近い距離に住むと、子世帯は親から育児や家事などのサポートを受けやすく、親世帯は、近くにいることでの安心感と子や孫たちにも気軽に会うことができ、日々の楽しみも増えるでしょう。
気のおけない親子の間柄。でも、ルール・マナーといったお互いの生活を尊重することを忘れてしまうと関係性が悪化することもあります。
ここで良好な近居ライフのためのポイントを3つ挙げておきましょう。

1.生活時間の違いを理解する

世代が違えば、起床や就寝、食事や入浴など生活のリズムが違います。たとえば、共働きの子世帯は、朝早く起きて、朝食、お弁当作り、出かける前に簡単な掃除、夜は子どもの塾のお迎えなど夕食の時間が遅くなることもあるでしょう。リモートワークで、日中は仕事に集中したいというケースも増えているはずです。時間にゆとりがある親世帯が、自分たちのペースで子世帯を訪ねるとストレスに感じることもあると理解しておきましょう。
プライバシーを考えて、訪ねるときはお互いに連絡をとりあうことが大切です。

2.親子であっても干渉しすぎない

世代が違えば、当たり前と思うことも違います。たとえば、子どもの教育。親世代にとっては、習い事や塾の数・種類、それにかかる時間や金額に驚くことがあるかもしれません。しかし、子世帯が子どもの将来や子どもの希望も考えて叶えてあげたいとがんばっていることに口を出すと意見がぶつかりやすいものです。また、お互いの健康を気遣った思いやりの気持ちからであっても、食事や生活習慣に干渉しすぎるのは良くないこと。
異なる価値観で生活を営む独立した世帯と考えて、遠慮することも必要です。

3."ありがとう"を忘れない

近くに住んでいると、お互いに何かと頼りにしがちです。たとえば、子世帯なら急な子どもの発熱でお迎えが必要になっても、仕事ですぐに動けないというときに親が迎えに行ってくれれば助かります。親世帯は、病院に行く、重たい買い物があるというときに、子どもに車の送り迎えを頼むこともあるでしょう。
近くだから当然なのではなく、日々のお互いのサポートを感謝すること、そしてきちんと言葉として伝えることが良好な関係を続けるコツです。

日々のサポートや安心感だけじゃない近居のメリット!

住まい選びの際、同居や近居には国や自治体などの支援を得られるメリットもあります。
国は施策として、子育てや介護について世代間でお互いの暮らしを助け合い、健やかに安心して暮らせる環境を作ることをテーマに、三世代同居・近居に対する支援を行なっています。
具体的には、三世代同居に対応した良質な新築住宅の取得支援のほか、三世代同居に対応した住宅リフォームへの税制上の特例措置、子育て世帯や高齢者世帯などと、支援する親族世帯が近居する場合のUR賃貸住宅の家賃減額措置(近居割)が実施されています。
また、自治体では住宅金融支援機構と連携し、【フラット35】地域連携型の適用を受けて住宅取得の借入金利を一定期間引き下げる制度を利用できることがあります。加えて、独自の助成金・補助金制度を用意している自治体もあるので、具体例を挙げておきましょう。
◎未就学児がいる子世帯が、親世帯の住む自治体に転入する際、最大20万円の助成金を支給する。
◎自治体内で同居・近居を始める際の引越し代、不動産登記費用、礼金、権利金、仲介手数料といった初期費用の一部を助成金として支給する。
◎同居・近居のための住宅取得費用に対し、上限30万円までの補助金を支給する。
などです。制度の有り無しだけではなく、対象や諸条件、募集期間といった内容が異なります。同居・近居を検討される方は、お住まいになる自治体のホームページを早めに確認するとよいでしょう。

まとめ

同居と異なる近居のメリットには、住み替えのしやすさも挙げられます。
二世帯住宅で玄関や水回り設備などを共有する住まいは、子世帯が転勤する、親世帯が施設に入るなど家族状況が変化した場合に空いた部屋を活用しにくいという問題が起きます。また、売却する場合も、買い手が限られるため売りにくさがあります。
親・子世帯が独立した住まいの近居であれば、こうした将来の変化にも対応しやすいといえるでしょう。
近居か同居かを検討する方は、親・子世帯で将来に向けた話し合いをしっかりするとともに、分かりにくいことなどは、不動産会社をはじめとしたプロに相談してみると理想の住まい方が見えてくると思います。

不動産に関するお悩みやお困りごとは、『阪急阪神不動産』にぜひご相談ください。

※2024年3月14日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。