子育て家族の住まい計画は、子どもの将来を先読みして空間を考えることが大切です。子どもは成長により行動が変化します。それに合わせて、必要と考えられる空間の広さや部屋の役割も変わってきますよね。
例えば、ハイハイしていた赤ちゃんが、つかまり立ち、歩けるようになるといった時期はどんなことに注意が必要でしょうか。仲良く一緒に部屋を使っていた兄弟姉妹も、思春期を迎えれば、それぞれが自分だけの部屋が欲しいと言い出すことでしょう。
今回は、子どもの将来を先読みして空間を計画した事例を交えて、親子が快適に住み続けられる住まいの考え方をご紹介したいと思います。
ハイハイする赤ちゃんに必要なスペースは?
ハイハイしている赤ちゃんと、1歳を過ぎて歩き始めた幼児では、どちらに多くの面積が必要かご存じですか?保育所に求められている基準を調べると、ほふく室は一人につき3.3㎡以上、一方、保育室は一人につき1.98㎡以上と定められています。
ハイハイする赤ちゃんの方が、必要となる面積が大きいですよね。
ハイハイ期とは、歩行、転んだ時に手を付けるといった手足をバランスよく使うことを学び、運動機能の発達を促す大事な時期。ソファや家具がある部屋は、つかまり立ちを早くできるようになりますが、身体の動きをきちんと習得するためには自由にハイハイを楽しんでもらえる空間があったほうが望ましいということになります。
ハイハイしても痛くない床、ホコリなどが舞いにくい、すぐにつかまれる家具が少ないといったことに注意して赤ちゃんの部屋を考えてあげたいですね。
※参照元:厚生労働省/児童福祉法 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第5章
子どもの成長スピードに追いつけるリフォーム?
ハイハイ期から、歩くようになるまではわずか1年ほど。親の目の届く場所で遊んだり、勉強したりも数年のこと。仲良し家族でも、子どもが個の空間が欲しいと言えば、要望には応えてあげたくなりますよね。
だからこそ、子育て期を過ごす住まいのリフォームは、あらかじめ将来を先読みした計画を立てて、柔軟な間取りを考えることが大切になります。
ここで、"子どもの成長を先読み"した事例をご紹介しましょう。
ベーシックな4LDKの間取りを、2LDK+ストックルームにリフォームしています。
リフォームした住まいで子育てを考えている方の参考になる注目のポイントをチェックしていきましょう。
Point.1:和室
リビング横に配した和室は、家具などを置かず、ハイハイ期やおもちゃを広げて遊ぶ幼児期の子どもがのびのびと過ごせる空間。大容量の押入れが設けられ、冬用や予備の布団も十分収まります。親や友人が泊まる際の客間としても活躍しそうです。
Point.2:キッチン
壁付から対面式キッチンに変更。リビングと和室を見渡すことができ、家事をしながらでも見守りや家族とのコミュニケーションをとりやすいはずです。また、家事中に一人背中を見せて寂しい想いをするということもないでしょう。
Point.3:主寝室
二間をつないだ主寝室は、赤ちゃんのベビーベッドを置いてもゆとりある広さ。小学生ぐらいの兄弟姉妹なら、学習机などは片側の壁に並べて、もう一方の空間にベッドを配置できるゆとりある共有空間となります。また、扉を2カ所設けているため、2つの窓を境に間仕切れば、2人の子どもに独立した個室がつくれます。子どもに部屋を与えている時期は、和室が親の寝室になることを想定しています。
Point.4:玄関
ほぼ倍の広さにしたことで、ベビーカーが置けるスペースを確保。赤ちゃんの乗せ降ろしも十分な広さだといえるでしょう。子どもが大きくなったら、外で使う遊び道具やアウトドア用品などの置き場としても便利そうです。
Point.5:ストックルーム
主寝室の収納は一見すると少ないですが、家族で共用できるストックルームがあることで、主寝室の自由度や可変性を高めているといえます。衣替えの手間も省けるかもしれません。
【リビングと和室】
【主寝室】
▶リフォーム事例の詳しい情報はこちらをご覧ください。
10年先を見据えた「子育て和室」のある住まい(8984.jp)
家族の間に"壁"をつくる、壁
リフォームプランを考える際、家族の人数に合わせた部屋数を重視しがちなのではないでしょうか。それぞれの個室のほか、広いリビングがあれば、家族はそこに集まり一緒の時間を過ごせるとイメージするでしょう。
でも、完全に個室化した部屋は、子どもにとって自由に過ごせる居心地の良い場所となり、閉じこもりがちになる場合もあります。
まさに壁が、家族の間の"壁"をつくる元になるといえます。
ご紹介した事例は、主寝室を子どもに与えた場合に、新たなリフォームで壁を設ける必要はなく、ゆるやかに空間を間仕切ることで個室感がつくれるようにと考えられています。
兄弟姉妹間で互いの気配を感じて、部屋が分かれていても会話ができる。どちらかが部屋にいなければ、自分も家族が集まっているリビングに...といった気持ちが起きやすくなるかもしれません。
柔軟な間取りは、家族の間に"壁"をつくりにくい。では、空間をゆるやかに仕切る、間仕切りにはどのようなパターンがあるのか整理しておきましょう。
間仕切りの代表的なパターン
◎引戸タイプ
ふたつのタイプがあり、1本のレール上にすべての扉が載っているものと、扉それぞれにレールがあるものに分かれます。前者は、扉を閉めた際に面がそろって壁のようになります。後者は、扉それぞれを動かせるため半分だけ開けておくといったフレキシブルな使い方が可能です。どちらも、レールを設けるためにリフォームが必要で、扉1枚分の仕切りが常にあるという状態になります(引戸には、下にレールを敷くタイプのほか、上吊りタイプもあります)。
◎可動式収納
住まいのサイズに合わせオーダーメイドする造作家具で空間を仕切ります。自分で簡単に動かすことができ、収納力もアップすることが魅力です。間仕切りの役割が不要になれば、壁に寄せて一部屋に戻すことも容易ですが、一定の奥行きがある分、部屋が狭くなります。地震など動かしたくない時に動かないよう固定する構造のものを選ぶことが大事です。
◎カーテンやブラインド
安価で開閉も簡単なのは便利ですが、天井に取り付けることが必要です。簡易的なものとして、伸縮式のカーテンタイプで、突っぱるだけで部屋に間仕切りができるものもあります。仲良し兄弟姉妹向きの間仕切りだといえるでしょう。
まとめ
家族の将来をすべて予測して、住まいを考えることは難しいでしょう。子どもの成長を先読みしたリフォームプランを練っても、イメージ通りの暮らし方ができるとは限りません。
柔軟性が高い間取りとは、子どもの成長とともに可変できるだけでなく、予測していなかった暮らし方にも対応しやすいといえるのではないでしょうか。
子どもが生まれ、家族が増える。子どもが成長し、暮らし方が変わる。子どもが独立して、家族の数が減っていく...。
リフォームやリノベーションで叶えるフレキシブルな住まいとは、こうした家族の変化を受容できることこそ魅力だといえるかもしれません。
長く快適に住み続けられる住まいの考え方のひとつとして、ぜひ、参考にしてみてください。
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※2024年2月16日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。