リフォームとリノベーションの違いや、そのコトバの境界線はわかりにくいですね。
一般的には、経年劣化した住まいを改修する規模の小さい工事をリフォーム、住まいの性能や価値を向上させる大掛かりな工事を含むのがリノベーションだといわれています。
戸建住宅の場合は所有者の判断で自由度の高いリノベーションも可能。一方、共用部分があるマンションは、専有部分であっても工事内容に制限を受けることがあり、リフォームやリノベーションをするときは、"できること、できないこと"を理解しておかなくてはなりません。
この記事内では、マンションの改修を工事規模の大小にかかわらず、リフォームと区分して整理してみました。想定ケースや筆者が体験したリフォームの成功・失敗談も織り交ぜながらご紹介していきます。
「知っているよ」という方も、いま一度、確認してみませんか。
"できる、できない"は、マンションごとに違う?
リフォームで"できること、できないこと"は『管理規約』と『建物構造』によって制限されます。つまり、管理組合で合意し定めることのできる『管理規約』と、建てられた時期や規模・工法などで異なる『建物構造』により、マンションによって制限される内容が違うこともあるのです。
区分所有法では、分譲マンションの室内の所有権は購入者にあり、この専有部分のリフォームは可能とされています。専有部分とは、玄関ドアの内側からバルコニーや窓の内側までが対象。壁・床・天井と、その空間内の設備交換などはできますが、専有部分内にあっても建物を支える躯体部分に関わるリフォームはできません。
考えられるリフォームケースとあわせて、より詳しく見ていきましょう。
【Casestady】
例:アレルギーがあり、ダニやハウスダストが溜まりやすいカーペットを排除したい。
例:ペットが滑りやすいフローリングを足に優しいカーペットに変えて、消臭壁紙にしたい。
リフォームとしてよくありそうで、「ほかのマンションでやっていると聞いていた」など、できないことが想定しにくい内容ですよね。でも、思い込みで判断すると、管理組合から工事の許可が下りず計画変更を迫られることもあり得るのです。
管理規約には近隣への音の影響を抑えるため、遮音等級が定められている場合があります。また、防火上の理由から床や壁で使用する材質の制限があることも。
この場合、"できない"わけではなく、遮音等級や防火の観点で設けられた規約をクリアできる適切な条件を満たすことが大事になります。
例:エアコンより乾燥しにくく、足元から部屋を暖める快適な床暖房を後付けしたい。
床暖房の設置の場合も、床材や遮音等級の規定がないか管理規約で確認が必要なのは同じです。さらに、床下に配管できる空間があるか、電気式床暖房であれば電気容量は問題ないかなども確認しなくてはなりません。
外置き型の熱源の床暖房もあるので、バルコニーが共用部分のマンションでは、種類選びも慎重にする必要があります。
例:お風呂を広くして、追い炊き機能とジェットバスの付いた大きな浴槽を設置したい
単純に、水回り(キッチンや浴室、洗面室、トイレ)の設備を一新するリフォームならNGとなることはあまりありません。このケースのように、広さを変えて、配管にも影響するような場合は、共用部分にあたるパイプスペース(給配管)に関わるためNGとなる場合があり、電気やガスの供給量にも影響します。
中古物件を購入してフルリフォームで、水回りの場所や広さも変更する可能性があるなら...。『スケルトンインフィル(建物を支える構造躯体のスケルトンと、住宅の内装・設備を指すインフィルが分離した工法。間取り変更が容易)』を採用している建物かということも、検討段階の事前確認項目に加えておくことをオススメします。
▶広々リビングの実現!以下の記事もご覧ください。
モデルルームのような上質空間を手に入れた家 | 阪急阪神のリフォーム(8984.jp)
例:子どもが独立したので、部屋数を減らして広いリビングを造りたい
上記でご紹介したリフォーム事例でも採用されたニーズの高いリフォームですが、専有部分の壁を壊して、空間を広げられるかどうかは建物の構造次第。
マンションの多くは『ラーメン構造』といわれる柱や梁で支える建物構造となっています。部屋と部屋を仕切る壁を壊しても、柱と梁が支えとなり躯体部分に影響しないことから、比較的間取り変更の自由度が高いとされています。
一方、"壊せない壁"もあります。『ラーメン構造』の場合でも、コンクリート壁が設けられている場合は、壊すことができないため注意が必要です。また、5階以下の低層マンションで採用されることが多い『壁式構造』は、鉄筋コンクリートの壁で建物を支えており、壊すことができません。『壁式構造』は間取り変更の自由度は低くなりますが、構造的に、柱や梁が室内に張り出す凸凹がないスッキリした空間のため、部屋のコーナーまで使えて家具配置がしやすいというメリットがあります。
間取り変更を含むリフォームは、建物構造を確認の上で検討しましょう。
例:断熱性を高めるため、窓サッシを交換したい
記事前半に触れたように、マンションの窓サッシは、内側は専有扱いであっても外側は共用部分。このため、基本的に住戸単位での交換を行うことはできません。幾度目かの大規模修繕工事の際に、管理組合で協議の上、全住戸のサッシを交換することもありますが優先順位としては低いことが多いようです。玄関扉も同様の扱いとなります。
ただ、マンションは住戸ごとに日照などの条件も違うため、一部の住戸だけに結露が発生するといった現象も起きえます。結露によって、カビやダニが発生しやすくなり、住む方の健康状態に影響するとなるとリフォームの重要性は増しますよね。
2011年、国土交通省は「マンション標準管理規約」を改訂しました。これにより、個別住戸の共用部分にあたる窓サッシは、断熱性の向上、結露などの解消、防犯の観点などの理由と、管理組合の承認を受けることで可能となっています。
こうしたケースのリフォームで、現在主流となっているのは『カバー工法』と呼ばれる既存の窓枠に上から窓をかぶせる方法です。
体験談、リフォームの成功○と失敗×
ここまでご紹介したケースに該当するいくつかのリフォームを筆者も体験しています。
もともとの間取りは、43㎡ほどの2DK。新築で購入してから10年が過ぎ、「リビングが欲しい。収納が足りない。北西向きで明るさが足りない」といった不満を持っていました。たまたま転勤が決まり、その間、賃貸に出すため、この機会に!とリフォームを決心。2DKから1LDKに間取りを変更しましたが、その結果は...。
【リフォームの評価】
①ダイニングと並ぶ部屋との間の壁を排除→◎
壁を壊したことで、2部屋分の窓から陽光が降り注ぐように。床材をカーペットから真っ白なタイル調に変更した相乗効果もあってか、予想以上に明るいリビングになった。
②リビングにテレビ壁面収納を設置→△
テレビ回りに棚を複数設け、飾り棚として考えました。が...、賃貸居住者が本棚として活用したため、想定耐荷重を超えていたようで歪みが出てしまった。
③ 壁付けキッチンを隠すカウンターと収納棚、上部吊戸棚を設置→○
リビングとキッチンの境界ができ、モノの納めるための家具も排除できたことで室内がスッキリ!
④キッチン設備をリビングの床とカウンターに揃えて白色に変更→×
キッチン設備を入れ替える予算がなく、コストを抑えるために塗装で色を統一。残念ながら、そこだけ安っぽくなってしまった。
⑤寝室として使用する居室の扉の変更→○
開き戸だった寝室の入口とクロゼット扉を引き戸に変更。開き戸分の床面積のロスがなくなり、部屋の有効面積が増えた。
筆者の場合は、知人の一級建築士に相談しながら計画を進めていったため失敗は少なかったように思います。設計のプロが管理規約や建物構造を確認し、筆者が実現したいことと、"できること、できないこと"、できない場合の代案アイデア、予算とのバランス、優先順位のつけ方など、多くのアドバイスがあって納得できるリフォームとなりました。
まとめ
ここまで記事をご覧いただいた方々は、『管理規約』と『建物構造』の制限を知っておけば"できること"が多いとご理解をいただけたのではないでしょうか。
いま、どんなリフォームをしたいとお考えでしょうか。
"自分が叶えたい"と思う、理想のリフォームを実現できるかどうかは、"できる、できない"だけで判断せず、より理想に近づける提案をしてくれる信頼できるプロをパートナーに選ぶことが一番のポイントだと思います。
不動産に関するお悩みやお困りごとは、『阪急阪神不動産』にぜひご相談ください。
※2023年10月19日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。