すまいのスタディ

2023.09.13

"住宅ローンのための保険"、団信で失敗しない基礎知識

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不動産を購入する際、住宅ローンを借り入れることは一般的でしょう。このとき、加入するのが"団体信用生命保険"、いわゆる"団信"です。
不動産の購入検討中という方は、「なんとなく、必ず入るもの」というイメージがあるのではないでしょうか。実は、団信は必ずしも入ることが条件なわけではありません。また、一般の生命保険と同様に団信にも種類があり、選択することもできます。
今回は、住宅ローンを契約する前に知っておきたい、団信の基本をおさらいします。契約後に、「失敗した」と後悔をしないよう押さえておきましょう。

そもそも"団信"って、なんのための保険?

団信は、住宅ローンを契約された方が亡くなってしまったり、高度障害状態になった際に、住居を確保するための生命保険の一種です。
最大の特長は、普通の生命保険は受取人である家族に支払われますが、団信の場合、支払先が住宅ローンを借り入れている銀行などの金融機関だということ。「もしも」のときに、団信で契約した保険会社が住宅ローンの残債分を一括で支払ってくれることで、家を手放すことなく、住宅ローンがなくなり、経済的な負担が軽くなるという仕組みです。

住宅ローン借入時に"団信"は必ず入るものなの?

冒頭にも記載した通り、住宅ローンの借入時に必ずしも団信の加入が条件となるわけではありません。多くの金融機関は、団信の加入を融資条件としていますが、住宅金融支援機構の"フラット35"は、任意で選択できるため健康上の理由やその他の事情で団信に加入しなくても利用できます。また、団信に加入しない場合は、団信保険料分の金利の割引を受けられます。

ただし、高度な障害を負ってしまい収入が途絶えても債務の返済義務は残りますし、万一、契約者が亡くなられた際には相続される方が返済を続けなくてはなりません。例えば、「ほかに加入している生命保険で、住宅ローンの残債分を支払える」「親からの相続などで完済の見込みがある」など、経済的な備えを十分に検討した上で加入するか否かを判断するべきでしょう。

"団信"の種類と違いを知っておこう!

住宅ローンを利用する方にとって、万が一の備えとなる団信は、保険料の支払い方法や保障内容などで種類が分けられています。
そもそも団信は、契約者(住宅ローン名義人)の死亡または高度障害状態となった際、住宅ローンの残債が相殺される契約となっています。この場合、一般的には保険料は無料、つまり契約者は支払いをしていない?いいえ、団信の保険料は、住宅ローンを契約した銀行などの金融機関が負担しているので、契約者の支払いがないから団信に加入していないということにはなりません。住宅ローン契約時に支払いについて確認しておきましょう。

保険料としての支払いはなくとも、住宅ローン金利に上乗せして支払いをしているタイプの団信もあります。主に"特約"といわれる、がん(悪性新生物)、3大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)、3大疾病に高血圧性疾患、肝硬変、慢性腎不全、慢性膵炎、糖尿病を加えた8大疾病などが挙げられます。
さらに、8大疾病に大動脈瘤および大動脈瘤解離、上皮内新生物、皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんを加えた11疾病型、精神障害等を除くすべての病気やケガを保障する全疾病保障型、介護が必要になった場合に保障が受けられる特約なども登場しています。
これらの団信は、金融機関によって保障内容に違いもあります。また、特約をつけることで、より備えは充実しますが、特約の保険料相当分として0.1~0.3%程度の金利が上乗せされます。「住宅ローンをどこから借りるのか」を判断する際には、住宅ローン金利に上乗せされる団信の保障内容をしっかりと確認することが大切です。

がん団信とがん保険。どちらに入るべき?

住宅ローンは借り入れると長期にわたり返済を続けるものです。現在、健康な方でも年を経ると何かしらの疾病を患うことがないとは言い切れません。特に、日本に多いとされる死因のひとつ"がん"。国立がん研究センターによる『最新がん統計のまとめ※』によれば、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は(2019年データに基づく)、男性65.5%(2人に1人)、女性51.2%(2人に1人)。そして、日本人ががんで死亡する確率は(2021年のデータに基づく)、男性26.2%(4人に1人)、女性17.7%(6人に1人)と公表されています。

近年、がんをはじめとした特定の疾病に対する保障は、団信に限らず一般的な生命保険でも多くのバリエーションが登場しています。その保障に対する考え方の違いを整理しておきましょう。

◎がん団信:所定のがんと診断された際、住宅ローンの支払いがなくなります。
◎がん保険:所定のがんと診断された際、一時金や、治療・入院のための給付金が支払われます。

団信は家計からの支出が減少し、保険では家計の収入を補う役割を担っているということになりますね。
「もし住宅ローンの契約者が、がんに罹ってしまったら...。」
契約者以外の世帯収入があれば、住宅ローンがなくなることで生活が維持できると考えると団信のみでもよいかもしれません。収入減少やさまざまながん治療に備えてまとまった給付金を受け取ることで生活が維持できるようなら保険に重きを置くことも考えられます。
どちらか一方にすることが大事なわけではありませんが、両方を選ぶことは必然的に家計における保険の支出が上がってしまいます。

団信に加入することは生命保険が追加されることと考えて、まずは、自分が現在加入している保険と保障内容を確認し、過剰な保障にならないかなど見直すことが大事です。

※出典元:国立がん研究センターがん情報サービス

まとめ

住宅ローンを借り入れて、団信に加入する際に気をつけておきたいのは契約内容の途中変更ができないこと、また、途中からの加入もできないということ。

住まいを購入した後も、家族が増える、子どもの教育費が上がる、仕事の変化や収入の増減など将来的な不安要因はいろいろあるはずです。でも、備えとして特約をつけたはずが、金利が上がってしまい返済が厳しくなってしまうこともあり得るでしょう。年齢が上がり病気が心配だからとあとから特約をつけたいと思うかもしれません。しかし、団信は途中で契約を変更できないため、契約する前にしっかりと検討して選びましょう。保険に関する見直しで不安があれば、専門家に相談した上で整理するのもよいでしょう。

不動産に関わるお悩みやお困りごとは、ぜひ『阪急阪神不動産』にご相談ください。

※2023年9月13日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。