すまいのスタディ

2023.06.16

耐震、制震、免震。地震に強い建物はどう違う?

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地震大国といわれる日本の国土面積は全世界の1%未満。しかし、世界で起きたマグニチュード6以上の地震の約2割が日本で発生しています。気象庁が震度1に満たない地震も含め地震計で常に監視している「震源リスト」によると、毎日、日本のどこかが地震で揺れているのだと知ることができます。
今回の記事は、地震に強い建物についてのお話です。

大地震で発生する「長周期地震動」とは?

地震は地下で起きる岩盤の「ずれ」により揺れが発生する現象です。揺れが1往復するのにかかる時間を周期といい、震源が浅く、マグニチュードが大きい地震ほど周期が長くゆっくりとした大きな揺れ(長周期地震動)が生じます。また、建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があり、地震波の周期と建物の固有周期が一致すると共振して建物がより大きく揺れ、高層建築物では高層階の揺れがより大きくなる傾向があります。

なかでも、長周期地震動は長距離・長時間伝わる特徴があるため、震源地から数百㎞離れていても大きな揺れが起こります。気象庁は、震度とは別に長周期地震動の揺れの大きさを4つの階級に分けてどのような危険が起こるのか示しています。2011年の「東日本大震災」では、大阪は震度3でしたが高層建築物は階級3の揺れがあったそうです。

長周期地震動階級

※出典元:気象庁ホームページ(data.jma.go.jp)

耐震・制震・免震。"揺れ"が違う建物の構造

"揺れ"に対する備えが求められる日本の家。住まいを検討する上で、"地震に対する強さ"≒耐震性の高さは気になる条件のひとつでしょう。"揺れに強い住まい"として、「耐震」「制震」「免震」の3つの建物構造の違いからご説明しましょう。

耐震:建物の強さで地震の揺れに耐える

柱・梁・壁の強度を高めて地震に耐えます。地震のエネルギーは直接建物に伝わり、揺れは大きく、大地震では建物が損傷することも。地震による倒壊を防ぐ考え方の構造で、小規模な住宅から高層建築物まで広く採用されています。

制震:建物の揺れを吸収し地震を抑える

建物内に制振装置(ダンパー)などを設置し、建物に伝わる地震のエネルギーを吸収。地震による揺れ幅を小さくし、建物の損傷を軽減します。建物の強さを補強する考え方の構造で、さまざまな形状の制震装置があるため耐震住宅にも導入できます。

免震:建物を浮かし地震の揺れから免れる

建物と地盤を切り離して浮かす免震層で、地震エネルギーを吸収して地震自体を建物に伝わりにくくする構造。地震時の建物の揺れがゆっくりするため、室内の家具などの転倒・損害を抑え、建物自体の損傷もより軽減されます。地震後の建物機能も維持されやすいことが特長です。

現状、いちばん"揺れに強い住まい"は?と問われたら、免震構造を採用した住宅だといえます。国土交通省は災害時の応急対応に必要な施設や文化財等収容施設は免震構造の適用を検討する基準を設けている点からも推し量れるでしょう。しかし、コストが高く住宅で導入することが難しいのも事実。次は、法律面からも耐震性を理解しておきましょう。

耐震基準。新旧の違い

1950年、日本は耐震基準を定めた建築基準法を制定。『建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。』としています。
そして、1978年に発生したマグニチュード7.4(震度5)の「宮城県沖地震」が契機となり、1981年には大地震で建物が倒壊しないことを前提とした新耐震基準を導入。この年を境に「旧耐震」「新耐震」と区分して安全性を知る目安となっています。

住宅の性能としての耐震等級

2000年に、耐震性はさらに強化され、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)が施行されました。住宅の品質を高める目的を持つこの法律では、「住宅性能表示制度」による基準と評価の共通ルールが定められています。10分野に区分した住宅の性能のうち、構造の安定に関する項目のひとつが耐震等級です。等級は、数字が大きいほど性能が高いことを示します。以下に、等級の違いをまとめました。ちなみに、長期優良住宅の場合は耐震等級2相当の耐震性が求められます。

1995年、マグニチュード7.3(震度7)の「阪神・淡路大震災」で新耐震基準の建物は大きな被害が少なかったとわかっています。そのため現行の新耐震基準は大きな改定がなされておらず、有効と判断されていると考えられます。
新耐震は耐震等級1にあたります。新しい建物ほど、厳しいルール下でつくられるよう制度も建築技術も進化しており、命を守るという安全性がより高められているといえるでしょう。

中古購入を検討するなら「耐震基準適合証明書」を!

近年増加中の中古住宅をフルリノベーションして、自由な住空間づくりを楽しむ暮らし方。魅力的ですが、購入物件が築40年以上を経た旧耐震で建築基準法のレベルに満たない場合はどうなるのでしょうか。

耐震性に問題がないか診断を受けて、必要に応じて耐震補強工事を実施。新耐震基準に適合していることを「耐震基準適合証明書」で明らかにすることが必要です。
証明書を取得することで、旧耐震の建物であっても住宅ローン控除や各種税制の優遇を受けられます。また、新耐震の建物が借り入れの条件となる住宅ローン「フラット35リノベ」も、所定の条件に記載された耐震性に関する基準をクリアすることで借り入れが可能です。

取得方法は、以下の3ステップです。
1)建築士や登録住宅性能評価機関などの専門家に依頼
2)耐震診断を実施してもらう
3)耐震診断の結果を受けて、費用を支払い「耐震基準適合証明書」を発行してもらう

耐震診断の結果が新耐震に不適合だった場合、より精密な検査や耐震補強工事を行うことでコストがかかる点には留意が必要です。購入する物件によっては取得する必要がないケースもあるため、不動産会社に確認しながら判断することをオススメします。

まとめ

高い確率で発生が予想されている、首都直下地震や南海トラフ地震。巨大地震が起きたときの甚大な被害は、日々の暮らしを変えてしまうこともあるでしょう。
日本の住まい選びでは、耐震性に優れた家を選ぶことが重要です。耐震性が高く、安全な住まいを知ることは、"地震災害のリスク"をできるだけ回避することにもつながるはずです。

住まいをご検討されている方は、ぜひ一度『阪急阪神不動産』に相談してみませんか?

※2023年6月16日時点の情報になり、今後内容が変更となる可能性がございます。