〈特集〉 この街この人
北野 真由子さん
ボーカリスト/シンガー、『ボーカルサロン キタノ』主宰、『さくらFM』パーソナリティ
1974年大阪生まれ。大阪音楽大学(音楽学部音楽学科声楽専攻)を卒業後、大阪市立科学館や渋谷西武百貨店などで勤務しながら、音楽活動をスタート。2006年より『ヤマハ大人の音楽教室』の講師となり、ボーカル、ゴスペルコーラス、シニアのための健康と音楽のコースを担当。15年間勤務したのち2021年に独立、2023年『ボーカルサロン キタノ』を設立する。その間も演奏活動は継続し、『LALALAにしきたミュージシャンコンテスト』グランプリ( 2012年)、『神戸新開地ジャズヴォーカルクィーンコンテスト』入賞( 2015年)など、シンガーとしての実績を積み重ねていく。ボーカル教室や自身のライブ活動に加え、2023年春からは、西宮市のコミュニティFM局『さくらFM』で西宮北口にフォーカスした番組『LALALAにしきた90分』のパーソナリティとしても活躍中。
2023年から月1回のラジオパーソナリティに挑戦。心を込めて「声を届ける」
「秋深き 隣は何を する人ぞ...」。
西宮市の『さくらFM』で毎月第4木曜の夜8時30分から始まる生放送ラジオ番組『LALALAにしきた90分』。取材に訪れた2024年10月24日のオープニングは、『奥の細道』で有名な松尾芭蕉の俳句が詠いあげられました。その声の主であるパーソナリティ・大芝右近さんと共演しているのが、関西を中心に活躍するボーカリスト/シンガーの北野真由子さんです。季節の所感やお互いの近況報告などの軽妙なトークのあと、リスナーからのメールやリクエスト曲を紹介する北野さんの、やさしく朗らかでハリのある声。引き込まれるように、聴き入ってしまいます。
さくらFMは、西宮市や同市内の事業所などが出資して1998年春に開局したコミュニティFM局です。周波数は78.7MHz。周辺地域のラジオで受信できるほか、同局公式サイト(*)などを通してインターネットで聴くことができます。放送内容は市民生活に密着した身近なニュース・情報や、リスナー参加で楽しく盛り上がる番組などのほか、西宮市・芦屋市からは市政情報をはじめ、台風や大雨などの緊急放送、イベント案内などをオンエア。放送開始13年目になる『LALALAにしきた90分』は、音楽イベントのプロデュースなどを手がける大芝さんが企画・構成から携わっています。
*さくらFM(インターネットサイマルラジオ)... https://www.jcbasimul.com/sakurafm
この番組を協賛する『西北活性化協議会』の事務局長も務めている大芝さんは、「僕だけだと苦みの強いコーヒーのような番組になるけど、真由ちゃんがまろやかなカフェオレにしてくれているんです。聞き上手で、ゲストを乗せるのもうまい!」。そんな賛辞に、「大芝さんの豊富な経験やお人柄にゆだねて、気楽にやらせていただいています。少しでもリスナーの皆さんにほっこりしてもらえる番組になればと願って。私自身はこの番組を通して、もっとMC力を磨きたいですね(笑)」と北野さん。自分の"声"を人に届ける......。本業であるボーカリスト/シンガーにも通じるラジオパーソナリティの月イチの仕事は、北野さんの生活に軽快なリズムを奏でています。
この日の放送では、西北活性化協議会が主催し、毎年実施している『LALALAにしきたミュージシャンコンテスト'24』の話題を紹介していました。北野さん、じつは2012年の同コンテストに参加し、見事グランプリを受賞。2年前からは審査員を務め、その縁で大芝さんから"ラジオ番組のパートナー"として白羽の矢が立ったというわけです。番組の終盤には大芝さんが自らギターを弾き、北野さんが生歌を披露する名物コーナーも。この日の楽曲は1968年発売の『長い髪の少女』。リスナーは50~70代も多く、懐かしいグループサウンズや昭和歌謡などを中心に選曲しているそうです。
歌が好きな人たちが集える場をつくって、音楽ライフと自己表現をサポート
現在、北野さんの活動の拠点となっているのが、2023年に設立した『ボーカルサロン キタノ』です。それまではライブハウスなどを借りて生徒さんにレッスンを行っていましたが、西宮北口駅からほど近い住宅街に新築された音楽専用マンションの一室をボーカル教室として使用。防音完備なので安心してピアノ演奏やマイクで歌うことができます。「"西北(にしきた)"は、私も生徒さんも通いやすく、最適な立地とタイミングでした」と北野さん。
このサロン最大の魅力は、北野さんのおおらかなレッスン法です。ポップス・ジャズ・ミュージカル・歌謡曲など、ジャンルにとらわれずライブやイベントに多数出演してきたシンガーとしての活動実績と、ヤマハ音楽教室での15年にわたる講師経験を生かした専門的な指導が持ち味。ナチュラルな呼吸法や発声などの基礎トレーニングと、生徒さんが歌いたい楽曲の歌唱を組み合わせ、「歌の上達や声の若返り、身体機能向上にもつなげて、"楽しく歌う"ことを習慣として身につけてほしいんです」と話します。
北野さん自身が音楽と関わることになった原点は、ピアノを習い始めた小学5年生の頃。小6で友だちと一緒に合唱同好会に参加し、先生に見い出されてソロパートを与えられ、いつしか歌うことに夢中に。中学からも同じ先生の声楽レッスンを受け、高校ではミュージカル部に所属。「『サウンド・オブ・ミュージック』のジュリー・アンドリュースに憧れましたね。今もミュージカル音楽が大好きです!」。
大阪音楽大学ではクラシックをメインに、卒業後はジャズやポップスも学んできたという北野さん。何でもこうすべきだとカテゴライズしてしまわず、思うまま自由に。「好きな歌を、気持ちよく歌う」という体験と実感を、生徒さんにも伝えているそうです。
北野さん自身のライブ活動は、西宮北口駅近くのライブハウス『RJ&BME❜S』(愛称"RJ")での定期ライブをはじめ、友人のバンドのライブなどにボーカリストとして招かれたり、イベントに出演したり。シンガーとして、ボーカル講師として、歌声が途切れることのない日々。「思えば私にとって、幼い頃から音楽は身近な存在でした。父が洋楽のレコードをかけて、母が鼻歌を歌いながらお弁当をつくってくれていたのを思い出します」。
そして、サロンの生徒さんや地元の人たちとの集いの場が、北野さん主催のイベント『まゆこランド』です。"RJ"で毎月第4日曜に開催するようになり、もう10年を迎えるとか。レッスンの成果を披露し合ったり、新たな交流が生まれるなど、アットホームな参加型音楽イベントとして浸透。この日のために練習に励み、「まゆこランドが生きがい」というほど心待ちにしている人もいるそうです。
大阪で生まれ育ち、結婚後は西宮や関東での生活も経験した北野さん。関西へ戻ってくるとき「やっぱり西宮がいいね」と夫婦の意見が一致し、市内の新築マンションを住まいに決めたそうです。その自宅は、余分なものが一切目に入らないすっきりとしたミニマムな空間。「夫も私も整理整頓が得意なほうで、部屋が片付いていると落ち着くんです。年齢を重ねるうちに、モノを増やさない、必要なものは厳選する知恵が身につき、そんな暮らしが心地よいと思うようになりました」。
『整理収納アドバイザー準1級』の認定講座を受講したこともあるという北野さんですが、「片付けは好きだけど、じつは収納上手ではないんです。収納アイテム内にきれいに並べる=モノがますます増える、というふうになりがちなので...」。山登りや土いじりなど夫妻共通の趣味で休日を過ごすことも多く、「まとまった休みが取れたら、どこへ行こう、どの山に登ろうと相談して決めます」。数年前からは近所の菜園を借りて野菜を育て始め、サラダや鍋料理など、新鮮な野菜たっぷりの料理が食卓をにぎわしています。
ほどよい都会の便利さと、緑や小川のきらめき。西宮北口は居心地のよい街
自宅から仕事先である『ボーカルサロン キタノ』までは、自転車で10数分。季節のよい時期や時間に余裕があるときは、のんびり徒歩通勤することもあるそうです。「西北の住宅街には小さな神社もいくつかあって、出勤途中にお参りすることも。「特に信心深いわけではないのですが、登山帰りにも麓の神社には必ず立ち寄り、無事下山できた感謝を込めて手を合わせています」。
自身のライブ活動の拠点であり、月イチの『まゆこランド』も開催している『RJ&BME❜S』は、西宮北口駅からすぐという立地もあって、プライベートでもよく訪れるお店です。このライブハウスの存在を20年ほど前に知って以来、マスターの多田さんとは気が置けない音楽仲間に。ライブハウスには珍しく完全禁煙のうえ、マスター手づくりの料理がおいしいのも大きな魅力。シニア世代の生徒さんたちを含む幅広い年齢層のお客さんたちも、すっかりこの店とマスターのファンになっているそうです。
西宮北口駅周辺には、緑を身近に感じられ、ひと休みできるベンチを設置した公園がいくつかあります。駅南東口から歩いて3分ほどの『高松ひなた緑地』もそのひとつ。「阪急西宮ガーデンズで買い物をした後に何気なく立ち寄ってみたら、思いのほか気持ちのよい場所で、お気に入りになりました」と北野さん。なるほど、通りに面して向かい合うガーデンズのにぎわいや駅構内の喧噪とは一線を画し、普段は人の出入りも多くなく、静かなやさしい時間が流れています。
大きな被害を受けた阪神・淡路大震災を経て、現在の西宮北口周辺は阪急西宮ガーデンズをはじめ『兵庫県立芸術文化センター』などの複合施設が建ち並ぶ再開発が進み、ここ30年で大変貌を遂げました。ショッピングからグルメ、映画・芸術鑑賞までが駅周辺で完結し、より便利で住みやすい街として全国的にも知られるように。阪急電車の大阪梅田、神戸三宮、宝塚各駅のほぼ中間地点だから、どこにでもアクセスしやすいのも人気のポイントです。「都心部ほどの人ごみや気取りがないお洒落なテイストに、自然がほどよく調和していて、働くにも暮らすにも居心地のよい街ですね」と北野さんは話します。
【 私が暮らす街 <西宮北口> 】
出会った人との縁を大切に育て、この街に元気な歌声を響かせたい。
ボーカルサロンの設立、初のラジオパーソナリティと、私にとってこの2年はとても大きな転機となっていて、人生の新たなステージが動き出した感じがします。『LALALAにしきた90分』は、『さくらFM』のスタッフの方々や大芝さんの長年の努力で、熱心なファンが大勢いらっしゃることに驚きました。これからも地域の人たちに向けて、より一層心和むトピックスを発信したいと思っています。
また、いずれはこの街で、誰もが気軽に集まることができる場、たとえば音楽と一緒に自家菜園の野菜を使った食事が楽しめる空間をプロデュースしたいなという野望も。まずはいろいろなイベントを企画したり、『まゆこランド』でも皆さんがよりハッピーになってもらえるように頑張りたいですね。歌を通して出会った人たちとの縁を大切につないで、ゆっくりと育てていきたいです。
ボーカリスト/シンガー、ボーカルサロン講師、さくらFM パーソナリティ
北野真由子
【北野真由子さん 公式】
https://mayuko-kitano.com
https://www.instagram.com/mayuko.kitano/
https://www.facebook.com/mayuko.kitano.7?locale=ja_JP
●ボーカルサロン キタノ
兵庫県西宮市北昭和町3-3
ヴィラムジカ西宮北口103号室
TEL/050-5473-1807
https://vocalsalon.mayuko-kitano.com
https://www.instagram.com/vocalsalon_kitano
●さくらFM/78.7MHz
兵庫県西宮市池田町9-7 フレンテ西館3階
TEL:0798-37-5512(代)
『LALALAにしきた90分』
第4木曜20:30〜22:00
https://sakura-fm.co.jp
●RJ&BME❜S
兵庫県西宮市甲風園1-6-2 セントラルビル 3F
TEL/0798-63-8018
営業時間/キッチンバー 18:00~23:00
LIVE・イベント イベントにより異なる~23:00
定休日/不定休(基本イベントのない月・火曜)
https://rjbmes.wordpress.com
https://www.instagram.com/rjbmes
●高松ひなた緑地
兵庫県西宮市高松町14
◇取材日/2024年10月24日(当記事の内容は取材日時点の情報に基づいています)