京都の八坂・祇園といえば「花街」の一角。特に八坂の塔を仰ぐこの界隈には、路地の奥に小粋な「茶屋」がたくさんあります。そうした風情や文化の薫りを楽しむために多くの人々が行き交う界隈。そんな街を「栖」にする心地よさを、私はこの部屋に表現したいと思いました。京都を拠点とする私にとって「住まい」と「栖」の定義は大きく異なります。「住まい」とは日常生活を送るための機能を整えたスペースです。家族との団欒、食事、就寝など最低限の空間機能がそこには求められます。でも「栖」は少し違う。別邸としての「アトリエ」でもいい。日常から離れた「隠れ家」でもいい。この街やこの街の持つ文化、環境、歴史とどう遊ぶか。それを具体的にあたえられた与件の中で考えた結果「栖」が立ち表れます。これはリノベーションだからできるデザイン行為でもあります。
